今、コミュニティの先駆者たちが考えていること: コミュニティデザイン、ビジネス、テクノロジー──Webの未来を語ろう 2017

こんにちは、編集長の白石です。HTML5 Experts.jp新春企画「Webの未来を語ろう 2017」の第一弾は、コミュニティ編です。

私事になりますが、私自身もhtml5jというWeb技術者コミュニティを2009年から5年に渡って運営していました。

その間、コミュニティ主催者という立場から様々な企業の方と関わらせていただく中で、経済誌やメディアではほとんど話題になることのない「コミュニティ」という存在が、不思議な影響力を人々に、そして経済にまで及ぼしているということを実感してきました。

そして、こちらもまだ大きく話題になることは少ないものの、コミュニティをマーケティングに活用する動きだったり、コミュニティ主催者同士での繋がりを作っていこう、という動きも発生しています。

今回は、そうした動きを活発に行われている方々をゲストにお呼びして、「コミュニティの先駆者たちが何を考えているか」を中心にお話を伺いました。テック系コミュニティに限定せず、様々な立場の方にコミュニティを語っていただいた90分。普段のHTML5 Experts.jpの記事とは異なり、マーケティングの話からツールの話まで盛りだくさんです。

今回は、ゲストの方々を集めて誌上座談会としようと思ったのですが、あまりにゲストが豪華になってしまったので、(Facebookで募集した)少数の聴講者の前で語るイベントになりました。「コミュニティという現象」に関心のある方全員にお勧めできる記事だと思います。どうぞお楽しみください。

ゲスト紹介

小島 英揮

元アマゾン ウェブ サービス ジャパン マーケティング本部長。日本最大のクラウドコミュニティ「JAWS-UG」の生みの親。2016年8月末でアマゾン ウェブ サービス ジャパンを退職後、コミュニティによるマーケティング手法を考えるコミュニティ、CMC_Meetupを立ち上げ。
2017年1月からコミュニティマーケティングを軸に、InstaVRStripeRider’s Garage, EventRegist, MOONGIFT等で、「パラレルキャリア」を実践中。

市川 裕康

株式会社ソーシャルカンパニー 代表取締役。ソーシャルメディア・コンサルタントとして、海外デジタルメディアのトレンド調査・執筆・講演・コンサルティング活動に従事。『現代ビジネス』(講談社)で連載(2010-2015)、著書に『Social Good小事典』。2013年からはコミュニティマネージャーが集うFacebook グループの運営を開始し、『コミュニティマネージャーサミット』を毎年開催。定期的な関連イベントも運営している。2015年から2016年にかけ、米国発コミュニティプラットフォームの「Meetup」のコミュニティマネージャーとして日本語化、日本でのマーケティング活動に従事。

坂本 千映子

株式会社リクルートテクノロジーズ サービスデザイン部 マーケティングリサーチグループマネージャー。2007年にリクルートに転職。MROC(Marketing Research Online Community)というマーケティングリサーチ手法を導入し、カスタマーのリアルな声に寄り添い向き合うサービスを提供する仕組みを作る。
現在はサービスデザイン部マーケティングリサーチグループのマネージャーとして、カスタマーの本音からサービスを創る取り組みをリクルートグループ横断で行なっている。

小沢 宏美

dots.コミュニティ・マネージャー。株式会社インテリジェンス新卒入社後、2,000名以上のエンジニアのキャリアコンサルタント、採用人事を経験。
現在はエンジニアのためのイベント&コミュニティースペースdots.のコミュニティーマネージャーを務める。



コミュニティ・マネージャー向けイベントの入場料は600ドル!(アメリカ)

白石 皆様、本日はお集まりいただき誠にありがとうございました。これほどバラエティ豊かで、かつ経験豊富な方々にお集まりいただけて光栄です。

本日は、Webやビジネスを語る上で欠かせない存在になりつつある「コミュニティ」という点について、広く深くお聞きできればと思います。 まずはコミュニティそのものを作ったり育てたり、という点についてお聞きできればと思いますが、ご意見のある方はいらっしゃいますか?

市川 一口にコミュニティといっても、実際には多種多様ですよね。興味や関心をベースにしたコミュニティもあれば、場所や地域、同窓会なんてのもある。目的も様々で、ビジネスに活用としているのか、そうじゃなくて趣味のコミュニティもある。皆さんはコミュニティに何を求めているのでしょう?

白石 今ここにいる方々にも聞いてみましょうか。ビジネスで活用しようとされている方?(半数くらい手が挙がる)そうではなくて趣味の方?(こちらも半数くらい)

聴講者 私はどちらも目的、って感覚ですね。

市川 なるほど、ここにいらっしゃってる方々も、コミュニティの目的は様々ですね。

とはいえ、どんなコミュニティであるにせよ、コミュニティを生み育てるのは意外と大変で、テクノロジーツールを活用することで効率化できたり、世の中で広く共有されてない運営スキルが必要になりつつあるという点において共通しています。

イベント企画や運営、集客、プロモーション、コミュニティメンバーとのコミュニケーション、オンライン・コミュニティの盛り上げなど、コミュニティ・マネージャーがやることは多岐に渡るし、それらを一人で抱え込むのには限界があります。ともすれば、コミュニティ・マネージャーの心が「ポキっ」と折れてしまいかねない

白石 確かに。

市川 なのでアメリカだと、コミュニティ・マネージャー同士が集まり、情報交換を行う場がいくつも立ち上がっているんです。例えばCMX Summitなんかはその一つ。UberやGoogle、Slackといった名だたる企業の人々が登壇していて600ドル以上という高額な参加費を支払って、多くの人が参加しています。

白石 600ドル!すごいですね、それだけの金額に見合うものが得られる場ということなんでしょうね。コミュニティ・マネージャーのノウハウはそれだけ希少ということでしょうか。じゃあ、そういう高額なノウハウの一端をお伺いできたりするとお得感満載なわけですが(笑)、JAWSの仕掛け人である小島さんいかがでしょう?

元JAWS小島さんが語る「コミュニティ設計の3つのポイント」

小島 そうですね、私としては、コミュニティを育てるポイントは3つあると思っています。

まずはコンテキスト・ファースト。コミュニティが立ち上がる場所やタイミング、中心トピック、誰が始めるかといった点は、コミュニティを作る上で実に重要です。コミュニティの設計やプランニングにあたっては、そういう「コンテキスト」(文脈)を重視する必要があると思っています。

次にオフライン・ファースト。これだけオンラインが発達した世の中でも、いやむしろオンラインが発達したからかもしれませんが、オフラインでの活動の価値が高まってきているように思います。

白石 そうですよね、例えばITエンジニアなんかも、インターネットがあれば仕事もコミュニケーションもできてしまう人種にも関わらず、オフラインのイベントに驚くほど集まりますしね。

小島 そうです。やはり、場の温度感や親密感といったものは、オフラインじゃないと伝わらないんですね。そこにこそコミュニティ活動の起点があると思っています。

最後にアウトプット・ファーストです。今登壇している私たちのように、コミュニティ内外に向けてアウトプットすることが重要です。 そうすることでコミュニティ内でのプレゼンス向上にもつながるし、自身の向学心を刺激することにもつながる。

なのでコミュニティ主催者は、いろんな人がアウトプットできる場を作り、アウトプットのハードルを下げることに努めるべきだと思っています。ライトニング・トーク(筆者注: 5分間限定のプレゼンテーション)などはその一例です。

コミュニティの「成功」とその秘訣

白石 dots.の小沢さんは、コミュニティ・マネージャーとしていくつもコミュニティ立ち上げをされてますよね。そこで得た知見を共有していただけますか?

小沢 そうですね、1年半ほどかけて10くらいのコミュニティを立ち上げてきました。でも、胸を張って「成功した」と言えるのは…1つくらいだったりするのですが。

白石 10個立ち上げた、ってすごいですね!しかしその中で「成功」と言えるのは1つくらいだと。ちなみにその1つって何でしょう?あと、そもそもコミュニティの「成功」って何なんでしょう

小沢 dots.女子部っていうコミュニティです。このコミュニティは、参加者の皆さんもすごく活発ですし、スタッフも20~30人くらいいます。そのスタッフのみなさんが、いろんなアイデアを出し合って、イベントやもくもく会などの新しい取り組みが自然に生まれている。こういう、「自発的な活動」が次々に起こるようになったことが、「コミュニティの成功」と言える気はしています。

白石 じゃあ、そういう「成功」に至った原因って、解っていたりしますか?

小沢 自分自身完全に理解できているわけではないのですけど、コミュニティの皆さんと深く共感できたことが理由の一つじゃないかな、とは思っています。女性エンジニアって、プログラミングという高い集中力を必要とする仕事をする一方で、女性特有の体の周期だったり、そういうものと付き合っていかなくちゃいけない。この仕事をやるようになって、私自身プログラミングを学んでみたことも、そういう女性エンジニアならではの気持ちを理解するのに役立っています。

白石 なるほど、コミュニティメンバーの気持ちを深く理解できたからこそ、メンバーのモチベーションも理解できて、自発的な行動を促す文化づくりもできたってことですね。

小沢 はい、そうですね。コミュニティが自走を始めたと言える状態になると成功かな、とは思っています。まだ道半ばなんですけどね。ただ、私の場合コミュニティを盛り上げた先に、自社のビジネスにも寄与しなくてはならないという事情もあるので、そういう意味でも道半ばかな、とは思っています。

「コミュニティ × マーケティング・リサーチ」というアプローチ

白石 お、じゃあちょうどいい流れなので、コミュニティとビジネスについても少し語っていただきたいと思います。ぼくなんかは、コミュニティにはずっとボランタリーな活動として携わってきたのですが、ビジネス的な観点から相談を受けることも結構出てきました。

そういうぼくの経験上からも言えることですが、コミュニティってビジネスの文脈だとマーケティング観点から語られることが多いですよね。ただマーケティングといってもユーザー獲得とか、プロモーションとか、ブランディングとかいろいろあるわけです。

そんな中、坂本さんなんかはマーケティング・リサーチにコミュニティを活用されているんですよね。

坂本 そうですね。私はリクルートのマーケターとして、様々なマーケティング・リサーチとかを行ってきてるのですが、従来のリサーチだと、なかなかユーザーの本音が見えてこないんです。そこでいろいろ悩んだ挙句、コミュニティを活用することにしたんですね。

白石 それって具体的に言うと、街中でおばちゃんが新製品についてのアンケート取っていて、それに答えると図書カードもらえる…とか、そういうリサーチでは足りないってことですか?

坂本 そうです。従来のマーケティング・リサーチって、例えばユーザーが100人いるとしたら、そのうちの4人からしか答えをもらってないようなものです。しかもその4人がポイントとかのご褒美目当てだったりする(笑)。つまり、本当にサービスを使ってくれている人、こちらが意見を聞きたい人って、全然アンケートに答えてくれていなかったんです。

白石 具体的には、コミュニティを活用してのマーケティング・リサーチと言うのはどういうアプローチなんですか?

坂本 やっていることの一つに、MROC (Marketing Research Online Community)というのがあります。こちらがご意見を伺いたいと考えたお客様にお声がけして、オンライン上で形成したコミュニティにご参加いただき、継続的にコミュニケーションを行いながら、そこからインサイト(顧客の本音)を探るわけです。

白石 それは興味深い。しかし坂本さんはリクルートのサービス全体を裏方として支えてるような存在なわけですよね。そういう(コミュニティを活用した)やり方はかなり大変で、スケールしにくいんじゃないでしょうか?

坂本 私の本業はリサーチそのものじゃなくて、リサーチの結果を活用してサービス作りなんですね。なので、リサーチについてはノウハウを継承して、社内に複数のプロフェッショナルを育成していっているところですね。

白石 なるほど、そうやってスケールさせようとしてるんですね。貴重なノウハウがありそうで、覗いてみたいです。一方で、マーケティングというと「ユーザー増やす」っていう側面も大きいと思うんですが、そちらに向けてコミュニティを活用する予定はないんですか?

坂本 可能性がないとはいいませんが、今のところまだ手探りって感じですね。弊社の場合、ゼクシィとか、30年もの長きに渡って運営されているサービスも多いわけです。そういうサービスはブランドもマーケティング手法もある程度確立しているので、新しい取り組みを行うにも慎重にならなくてはなりません。

コミュニティのビジネス上での目的を明確化する

白石 ところで、ぼくの経験からいっても、「コミュニティが本当にビジネスにプラスになるのか?」の検証は本当に難しいと想像してます。ぼくなんかは、以前ビジネスでコミュニティを運営していたわけではなかったので、なおさらですね。 事前にどんな成果を期待するのかや、成果の測定も含めて、その点についてはどう思われますか?

小島 それについては、まずコミュニティを作るビジネス上の目的を明確にする必要があると思います。まず、コミュニティマーケティングにリード・ジェネレーション(見込み顧客づくり)の効果を直接期待してしまうことが多いのですが、それは期待通りにはいかないでしょう。コミュニティマーケティングは、デマンド・ジェネレーションに効果があると思っています。

白石 デマンド・ジェネレーションって、具体的にはどういうことですか?

小島 例えば、そこの女性(聴講者)にお聞きしたいのですが、フェラーリって買いたいと思いますか?

女性 いえ…かろうじて(ブランドを)知っている程度です。

小島 そうですよね。でも、「フェラーリの香水」って聞くといかがでしょう?(筆者注: 「フェラーリの香水」は実際に存在する)ちょっと興味がわきませんか?普段のフェラーリというブランドは遠い存在でも、一手間加えることで「自分と関係がある」という存在に思わせることができる。もしかすると「(製品を)欲しいかも」と思わせることもできるかもしれない。いかに「自分ゴト化」するか、これがデマンド・ジェネレーションです。

白石 なるほど!面白い。

小島 コミュニティマーケティングが最も効果を発揮するのはこの分野(デマンド・ジェネレーション)であって、決してリード・ジェネレーションに限定されるものではない。そこははっきりさせておいた方がいいかもしれませんね。なので、コミュニティマーケティングの成果をリード(見込み顧客)獲得数とかで測ろうとしてしまうと、「期待していた効果が得られない」ということになってしまいかねません。

小沢 私からもちょっとお聞きしたいんですけど、コミュニティマーケティングは、どんな商品に対しても可能なんでしょうか?

小島 私は、「ユーザーがいる」商品であればそれは可能だと思っています。たとえそのユーザーが少なくても、ですね。たとえまだユーザーが少なくても、そこには人が集まっているわけで、その集まりを起点に、コミュニティを大きくしていくことは可能だと思っています。

というよりはむしろコミュニティマーケティングは、ユーザー数が少ない段階から広げていく段階にこそ効果があると思いますね。アーリー・マジョリティやレイト・マジョリティよりは、アーリー・アダプターを対象にしたほうが効果が高いと感じています。

(筆者注: デマンド・ジェネレーションが「需要の具現化/創出」という役割を持つ以上、需要がまだ具現化していない段階にこそ効果が高いのだと思われる)

コミュニティの価値を「見える化」する

白石 コミュニティ活動の成果を測定するという点についてはどうでしょうか?ビジネスとして、コミュニティ活動を継続的に行っていくには、そうした数値化も必要になってきますよね。

小島 他の様々な事柄と同様に、コミュニティのKPIにも、量的なものと質的なものがあります。もちろん、量で測れるものはありますよ。イベントの集客人数だとか、開催頻度だとか、コミュニティメンバーの数とか。ただ、コミュニティ活動には、そうした数値では表せないものが大きいのも事実です。例えばイベントの「熱気」だとか。

白石 確かに。で、数値で表せないものをそのままにしておくと、例えば上司にうまく伝わらなくて、予算打ち切られたりしそう(笑)。

小島 そうなんですよね。ただ、数値化できないものを伝える手段はあるんです。例えばぼくなんかは、イベントにAWSの一番偉い人を呼んだりしました。で、その偉い人に乾杯の音頭を取ってもらったりすると、偉い人も「この盛り上がりはすごい、他の国でもやるべきだ」となるわけです(笑)。偉い人を呼ぶのは、参加者の皆さんも喜ぶし、いいことづくめでしたね。

坂本 私が所属するリクルートは、数字にかなりシビアな会社なので、数値化には積極的にトライしますね。

例えばイベントをやったとしても、すぐ後にアンケートを取ったり。「人間は60分以上経つと最初の印象を忘れてしまう」なんて話もありますしね。 NPS (Net Promoter Score: ネット・プロモーター・スコア)とかも一時期流行りましたよね。 ただ日本人の場合、11段階の選択肢にしても結局真ん中あたりの選択肢ばかり選ばれちゃうので、なかなか苦戦しますけども。

(筆者注: WikipediaによるとNPSとは、「顧客ロイヤルティ、顧客の継続利用意向を知るための指標。…『0~10点で表すとして、この企業(あるいは、この製品、サービス、ブランド)を友人や同僚に薦める可能性はどのくらいありますか?』という質問に対する答えをもとに、点数(推奨度)によって顧客を3つのグループに分類する。」とのこと)

コミュニティ・マネージャーたちの悩み

白石 ここにいらっしゃる方々は、それぞれ全然違った立場からコミュニティに関わってらっしゃるわけですが、それぞれの立場で直面した困難などあれば聞かせてください。

小島 作ろうとしている分野にすでにコミュニティが存在してしまっている場合は、なかなか難しい舵取りを迫られますね。既存のコミュニティに、企業が後から関与するのは不可能と言ってもいいかもしれません。必要とあらば、新たに作ってしまったほうがいい

例えば、アメリカにはAWSのコミュニティってたくさんあるんです。ただし、それらのほとんどにAmazonは関与できていない。 JAWSの事例を見て、「アメリカでもやりたい。できるはずだ、すでにコミュニティはあるのだから」と考えて動いていたのですが、なかなか思うようには進まなかったようです。

白石 コミュニティの仕掛け人である、小島さんならではの知見ですね。では隣の坂本さん、いかがですか?

坂本 コミュニティを作るのが難しい分野がある、ということを痛感したことはありますね。 例えば昔、塾の先生を集めてコミュニティを作ってみようとしました。ですが、基本的に塾の経営者って一人でやっていることが多くて、人とつながろうということをそもそも望んでいなかったんですね。なのでうまくいきませんでした。

白石 確かに、つながることを望んでない人たちを集めてコミュニティを作るのは難しそう。

坂本 あと、企業主導でコミュニティを作ろうとすると、企業側の意向が強くなってしまいがち。 コミュニティはあくまでユーザーのものなので、これは気をつけなくてはなりません。企業が行う時は、「意見をどのように活用するのか」「その結果どうなったのかをきちんと報告すること」「ユーザーが話したいことを中心に聞く」についてこだわって運営しています。

小沢 私としては、成果が見えづらいところに難しさを感じていますね。

昔営業職だったときは、自分の努力が数字で表されて、それを上げていくことに満足を得ていたんです。でも今やっているコミュニティづくりって、自分の努力と、得られた数字に関連があるのかどうか見えづらいんです。自分が頑張ったから数字が上がったのか、それとも別の要因なのか?よくわからない。

そうなってくると、自分のやっていることの価値がいまいち信じられなくなってしまいます。製品が優れてさえいれば、コミュニティを作る必要なんてないのかも?なんて思うときもあります

個人的な悩みを打ち明けてる、みたいな感じになっちゃってすいません(笑)。

白石 いえいえ、それって中核を捉えた、すごく重要なご意見だと思うので、そういう話が出てくる事自体、すごく価値があると思います。

その話は、先ほど話に上がった「コミュニティの成果を見える化する」という話とも繋がってきますね。あと、小島さんがおっしゃっていた「コミュニティマーケティングはデマンド・ジェネレーションに効く」って話とか。

そういう認識から、再度自分の活動の価値を再評価してみてもいいのかもしれませんね。

小島 それにしても、小沢さんは1年半で10ものコミュニティを作った経験があるわけですよね。その経験って、大変得難いものだと思うんです。それをフレームワーク化して世の中に出すということを考えてみてもいいんじゃないでしょうか。 そのノウハウ自体、大変な社会的価値があると思います。

小沢 そうですか?なるほど…それ、ちょっとやってみようかなあ。考えてみます(笑)。

オンライン・コミュニティを支えるツール・サービスたち

白石 そろそろお時間も迫ってまいりましたが、一つ大きなトピックを残しています。コミュニティ×テクノロジー、平たく言えばコミュニティ活動に使えるツールやサービスについてなんですが、ここって一番詳しいの市川さんだと思うので、軽くまとめてお話をお願いしてもいいですか?

市川 わかりました。まず、コミュニティ活動にはオフラインのイベント開催は欠かせないので、イベント開催支援サービスからいきましょう。

この分野だとPeatixconnpassDoorkeeperあたりがよく使われているかと思います。あと、私が昨年勤めていたmeetupは、海外のユーザーがたくさん登録していますので、外国人を多く呼びたいイベントとかにはいいと思いますね。

それぞれに特徴がありますが、一回限りのイベントに使うことも、継続的なコミュニティ活動にも使えるサービスばかりです。

ちなみに、一回限りのイベントと、継続的なコミュニティの間には、マインドに大きな違いがあると思います。meetupで長く続いているコミュニティは、イベントの平均人数が8人とかだったりするんですよ。

白石 8人!結構少ないですね…細く長く、ってコミュニティが多いということでしょうか。

市川 そうですね。ただ、そういうコミュニティの中でも人は入れ替わり立ち替わりしていて、活発に交流している様子が伺えます。 あと、コミュニティとして継続させるなら、メディアを持つことを考えてもいいと思います。

白石 なるほど、メディアか。例えばMediumとかですか?

市川 Mediumは、だいぶ名前が浸透してきたとはいえ、日本ではまだまだマイナーですけどね。ブログサービスはたくさんありますし、WordPressで自分で立ててもいいし、いろいろ選択肢はあると思いますが、とにかくメディアを作るという行為自体見過ごされやすいので、やったほうがいいと思いますね。

あとツールといえば、コミュニティ内のコミュニケーションツールですね。ここはSlackとかも使われ始めていますが、まだFacebookグループが有力かな、と。ただ、Facebookグループの投稿って人に気づかれにくいという問題がありまして…(笑)。

白石 ホントそうですよね。Facebookグループって、基本的に「みんなが見るとは期待しない」というスタンスで投稿するしかない(笑)。

先駆者たちが語る、コミュニティの未来

白石 では最後に、コミュニティの未来や今後の展開について、皆様の思うところを聞かせていただけますか?直近のお話でもいいですし、2020年とか、少し未来を見据えた発言でも構いません。

小島 2020年とかを考えると、「コミュニティマーケティング」という用語がもっと一般化していると思いますね。今はまだどの企業も手探りという段階ですが。そして、コミュニティマーケティングを普及させるということについて、個人的にも尽力したいと考えています。

坂本 これは、リクルートという企業のサービスや、そこに集う人たちを見てきて思うことなんですが、リクルートのサービスって結婚や転職、旅行など、大きなライフイベントに関わっているものが多数あります。で、そうしたライフイベントに居合わせた人たちって、意外とその後もずっとつながってたりすると思うんですよね。

なので、今あるコミュニティの概念を少し広げて、一度同じライフイベントに居合わせた人たちが、その後もずっとつながっていられるようなコミュニティがあるといいのにな、と思います。

白石 面白いですね、「一生一緒」みたいなコミュニティとか、ってことですね。では、小沢さんいかがですか?

小沢 個人的な宿題としては、途中で小島さんからいただいた「コミュニティづくりのフレームワーク化」を頑張ってみようかな、と(笑)。

今後デバイス含めてテクノロジーの進歩が加速していくと、オンラインで全て完結してしまう世の中になっていくと思います。Uber EatsとAmazonさえあれば、何日でもおうちに篭っていられる、みたいな(笑)。

でも人の特性って結局そうではなくって、五感での人と人の繋がり、温かい繋がりを求めてしまうものだと思っています。それは過去を見ても同じ。mixiのオフ会とかまさにそうですね。まとめると、オンライン化が加速すればするほどオフラインでの繋がり、つまりコミュニティ活動というのはさらに重要性を増すのではないかと考えています。

そういうことも含めて、コミュニティをもっともっと盛り上げていきたいですね。

白石 コミュニティを盛り上げるといえば…そういえば今日(2017/1/18)ニュースがありましたよね。宣伝、してもいいですよ(笑)。

小沢 ありがとうございます(笑) 。実は今日、dots.のWebサービスが機能強化しまして、誰でもイベントを作れるようになったんです。コミュニティ機能とかも搭載していますので、これからコミュニティやイベントをやろうという方、ぜひご利用を検討してみてください。

市川 私は、コミュニティ・マネージャーの労力や精神的負担を少しでも減らして力になりたいと考えていまして、今、「コミュニティ・マネージャー100の心得」みたいな資料を作成しているところなんです。

会場: おー!(歓声)

市川 来週1/23に、「コミュニティ・マネージャー・サミット」というイベントを行うんですが、そこでお披露目する予定です。完成したら、皆さんにも必ずお知らせしますね。

追記:1/23に開催されたイベントレポートはこちらになります。「コミュニティマネージャーサミット2017開催レポート

白石 それは楽しみです!では皆様、大変濃くて有意義なお時間を、どうもありがとうございました!

おまけ

本座談会のあと、新年会(懇親会)を開催したのですが、イベント前後で、参加希望者が2倍に増えました。イベント主催者としては望外の喜び。(お店の人にはごめんなさい)

これも、イベントを通じて「自分ゴト化」が進んだ結果ですね。これぞデマンド・ジェネレーション。コミュニティばんざい!😊 (↓は懇親会後の360°全天球写真による記念撮影)

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