【Webデザイナー必読】IoT時代のデザイン思考を探る─久下玄×秋葉秀樹 デザイナー対談

連載: IoTxWeb (3)

IoTの時代、それはモノのデザインとWebのデザインが交錯する時代と言えます。 そんな時代に必要とされるデザイン思考とはなんでしょう?モノのデザインとWebのデザイン、そこにある違いは、そして共通するものは何でしょう?

この記事ではそんな疑問の答えを探るべく、この記事では、プロダクトデザインとWebデザインのプロフェッショナル2人を引き会わせて、デザインについて、デザイナーについて、UXについて、Webについて、IoTについて、気になることを全部語っていただきました。

プロダクトデザインとWebデザイン、その境界線から見える景色を、それぞれの分野のエキスパートが語ります。

〜登場人物紹介〜


久下玄(くげはじめ): デザイナー/エンジニア/ストラテジスト。東京造形大学卒業。家電メーカーのプロダクトデザイナーを経て、2009年にtsug,LLC創業。事業戦略、技術開発、製品デザインまで手がける。統合型デザインで、国内外の企業のイノベーションプロジェクトに携わる。並行して2012年Coiney,inc創業に参加し、以後プロダクト開発を担う。2010~2013年まで慶応大学SFC研究所にて、研究員として通信とデザインの研究および教育に携わる。近作に脳波ヘッドフォンmico(neurowear)やスマホ決済サービスCoiney(コイニー)など。受賞多数。近著は「リアルアノニマスデザイン」(学芸出版社・2013年・共著)。

秋葉秀樹(あきばひでき): 株式会社ツクロア(tuqulore)代表取締役/デザイナー。HTML5 Experts.jp公認エキスパートNo.16。 本業はデザイナー。DTP・グラフィックデザイン・Webフロントエンド全般・Flashゲーム開発・3DCGと幅広く携わる。主な作品は海遊館やサンシャイン水族館とコラボしたAndroid/iPhoneアプリ「Ikesu」。NFC技術を世界で初めて水族館で利用して魚をスマートフォン内に持ち帰られる体験を提供し、2ヶ月足らずで一万人が利用、人の集まる場所に私たちのデザインがどうビジネスに貢献するかをテーマに仕事をしている。近著に『Firefox OSアプリ開発ガイド』(リックテレコム)。その他、共著として『10倍ラクするIllustrator仕事術』(技術評論社)や『すべての人に知っておいてほしい HTML5+CSS3の基本原則』(MdN)など多数。2013年4月に株式会社ツクロアを設立。

聞き手: 白石俊平(しらいししゅんぺい): HTML5 Experts.jp編集長

Webデザイナーの制約、そしてアドバンテージ


白石: まずは、簡単な自己紹介からお願いできますか?

久下: Coineyではプロダクトの統括を担当しています。Web、モバイル、ハードウェアなど様々な分野のデザイナー、エンジニアたちをまとめているという立場ですね。

久下玄さん

久下玄さん


ハードウェアやソフトウェア、Webやモバイル・アプリケーションといったものは、Coineyという会社のサービスにとっては欠かすことのできないものではありますが、あくまで「部分」です。それらを組み合わせてサービス全体ができ上がっている。その全体を「プロダクト」と言い表していて、僕はそこを統括しているという形です。

ところで、秋葉さんが手がけられたIkesu、見ましたよ。とても面白い。

秋葉: ありがとうございます。あれは「ゲーム」と見なされることも多いのですが、もともとは「(水族館に)集客する」という目的に沿ったものを作りたかったんです。

秋葉秀樹さん

秋葉秀樹さん


Webサイトを立ち上げて、ただ「来てください」と連呼したところで、効果はたかが知れている。なので、お客さんが自分から訪れたいと思えるような仕掛けを、デザイン主導で作りたい…というのがIkesuにおけるチャレンジでした。たまたまNFCという技術も話題になっていた頃だったし、新しい技術の「実証実験」的なこともやりたかったという思いがあったんですけどね。


久下: なるほど。最近は秋葉さんのように、「Webサイトを作るだけ」っていう取り組み方にフラストレーションを貯めているWebデザイナーも多そうですよね。今までWebデザイナーって、「スクリーンの中だけ」というかなりきつい制約の中だけで戦ってきてるわけじゃないですか。

秋葉: そうなんですよね。ぼくもWebデザイナーという職種からは一歩踏み出してしまったな、と感じているところです。

久下: とは言え、Webデザイナーという職種にはすごいアドバンテージもあるな、とは思います。というのは、「目の前にお客さんがいない状況で、その行動を推測する」ということに長けているわけですからね。

「もの」のデザインっていうのは、人がその「もの」を使っているところをこの眼で確かめることができる。一方Webは、お客さんがほとんど見えないんですよね。それを、推測だけでグロース(サービスを成長)させていくってことを、これまでもずっとやってきているわけじゃないですか。

もちろん今は、トラッキングツールも増えてきていますけど、根本的にはスクリーンに対する反応しか確かめられない。ユーザーの操作を追うことはできますが、そのときユーザーがどんな感情だったか、どんな表情をしているかといったところは結局わかりません。

そういうところを類推しながら作っていくというのが、Webの人たち独特のカルチャーでありスキルだな、とは思いますね。プロダクトやモノの世界には、そういうことはほとんどありませんね。利用シーンを目にするのは簡単なので、そんなことをしてたら怒られますからね。「お前、客のところいけよ」と(笑)。

秋葉: 確かにそういうところはありますね。それがアドバンテージであるというのは、言われてみるまで気づきませんでした。

デザインの根拠、目的、成果物


秋葉: ただ、「推測」に頼る度合いが大きい分、デザインに対する根拠が薄弱であるというところはあるかもしれません。デザインを何案か提出して、お客さんがその中から一つ選ぶ。でも、それを選んだ根拠は何なんだ、と(笑) 。そもそもそのデザインが正解かどうかなんて、納品の時点では絶対にわからないはずなんです。

久下: そもそも新しく何かを作るときに正解なんてわかるわけないですよね(笑)。特にWebサービスとかって「ローンチしてみないとわからない」ってのがホントのところじゃないですか?対象となるお客さんも多いし、多様だし。

秋葉: そうなんですよ。なので、最初に全てをデザインしようとするというのはなんか違うな、と思うようになって。

久下: 最初からそんなに大きなコストを払っても、リリースしてみないと当たるかどうかわからない。というか、ほぼ外れるじゃないですか(笑)。大きな賭けですよね。

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久下: 僕がやっている別のデザイン会社の方でも、「納品物体がある前提」をやめてもらえるようにしたんです。目的ベースで考える。例えば、「このサービスのお客さんを増やしたい」とかそういう目的。そのために、リソースを何ヶ月使えます…という仕事のかたちにしたんですね。

なんでそういうふうにしたかというと、通常の納期ありきの仕事だと、「納期に間に合わせること」が目的になってしまうんです。「納期が残り3週間しかない、じゃあ、3週間の中でできることをやろう」というふうに、目的が変わってしまうんですよね。

秋葉: ミッションが変わってしまうんですよね。

久下: コンペとかについても同じようなことが言えます。僕が仲良くしていただいてる、尊敬するデザイナーで西澤明洋さんという方がいて、コエドビールとかのデザインを手がけられた方なんですが、彼が言うには「コンペは誰も幸せにならない」と。

なぜかと言うと、クライアントはいろんなものを見たいという目的でコンペを主催するのですが、それを受ける側は「コンペに通るため」のアイデアを出そうとしちゃうんですよね。そもそも持っている課題に対するアイデアは出てこない。

「A社はこうくるだろう、B社はこうくるかな、じゃあうちはこういこう…」ってな感じで、そもそものお客さんが関係なくなっちゃうんですよね。だから、コンペに参加するのは一切やめたと言っていました。

秋葉: 僕もコンペは参加しないことに決めてます。っていうのはですね、最後にコンペに参加した時に他のチームの人が「とりあえずプレゼンの時だけいいものを作って、実際に制作する段階で無理が判明したら言い訳すればいい」ってことを言っていて、それがショックで。僕は「コンペで印象深いものを作る」ということを目的にはしたくなかったので、やめちゃいました。

久下: でも、そういう問題って至るところにあるんですよね。自社でプロダクトを作っているCoineyでも、似たようなことはありました。十分な検討がなされずに納期だけが先に決まっちゃってて、そこまでに作らなくてはならない…みたいな状況ですね。ビジネス側からの無理な要求が開発に負荷をかけてしまうようなことが往々にしてあって、そうなるとクオリティが上がらなかったり、あとでサポートとかバグフィックスとかにコストがかかってしまったりして。

今回のインタビューはCoiney社に伺いました。

今回のインタビューはCoiney社に伺いました。


秋葉: コストを投下する側の考え方としては、「お金を出したからにはそれに見合うモノを得たい」という気持ちなんでしょうね。

久下: その気持ち自体は、ある意味しょうがない。とは言え、その「モノ」のクオリティと本質が問題です。サービスやプロダクトという言葉が、そもそも今の時代オブジェクト(具体的な「もの」)を指す言葉じゃなくなってきている。インターネット以前の工業製品オンリーの時代では、プロダクト=オブジェクトだったかもしれません。

でも今は、プロダクトの本質が「オブジェクト+情報」の場合もあれば、「体験そのもの」であってモノもカタチもない、ということだってありうるわけです。商取引における「プロダクト」の概念や本質はずいぶん変わってしまったのに、いまだに「プロダクト=オブジェクト」という古い感覚が残っているのが問題。

秋葉: そうですよね。モノがなければ成果物とは見なされない、という時代はもう終わりに近づいていると思います。なので最近では、「納品」という行為についても考え直しているところです。多様なユーザーがいる中、最初から正解となるデザインにはたどり着けない。だから最近は、お客さんと一緒にサービスを作り上げていくというスタイルに変えていきたいな、と思っています。

IoT時代のデザイン思考


秋葉: ただ、そういうスタイルに変えていくのは一筋縄でいかないのが、最近悩みの種でもあります。従来の一括納品というかたちではなく、デザインもエンジニアリングもお客さんと一体になって、サービスを少しずつ成長させていく。そういう関係にしていきたいのですが、どうすればそこに辿り着けるのか、と。

久下: 作る側だけじゃなく、お客さんにも学んでいただく必要があるかもしれませんね。幸い今は、そういう考え方での成功事例がたくさんありますし。デザインとエンジニアリング、プランニングといった言葉がすごく近いというか、ほぼ一緒になってきているような事例が増えてきていますよね。アップルがその典型的な成功例だと思いますが。

秋葉: そういう事例が増えていく中、「デザインそのものに対する考え方を見直そう」と考える人たちもやはりすごく多くなってきている感覚があります。仕事の進め方もそうですし、IoTの時代と言われている中で、PCやスマートフォンのスクリーンの中だけで終わらせようとすることも見直されつつある。「果たしてそれでいいのか」と考える人が増えています。

久下: 僕も、そういう意識の変化には賛成です。スクリーンの外のものも、すべて統合して考えるべきだと思います。そういう点で言うと、「UXデザイン」ってぼくはすごくいい言葉だと思うんですよね。だって、いろんなことをUXデザインって言葉で表すことが可能じゃないですか。「世の中に対して、体験そのものをどう作るか」っていうところから、全体を統合して考えようとする姿勢をよく表せる言葉だと思います。

で、体験を作るにあたっては、結局のところ「人の気持ちがわかる」っていうのが勘所になってくる。

秋葉秀樹&白石俊平
秋葉: わかります。いろんなデザインがあるけど、必ずその先に人がいて、その人の生活や感情がある。

久下: そういう勘所が分かる人っていうのは、デザインという領域の中においても、だいたい何をやらせてもうまいんですよね。スキルの分野とは関係なく。

例えば工業デザインだったら、モノを作るために加工法や素材への精通、3DCADや量産設計等のいろんなスキルが必要になります。Webだったらフロントエンドの知識から、サーバサイドどうするかなどの知識やスキルが必要になる。ただ、そういうスキルって後からいくらでも習得可能なものじゃないですか。特に最近は、スキルを身に付けるスピードがみんなすごく早い。それはなぜかというと、スキルって当たり前ですけど人のために作られているので、ちゃんとした材料とフローさえ踏めば、だれでも割と学べちゃうんです。

それよりも、そういうスキルを使って何を作るか、どういう体験を作るかという点が重要です。みんなここを簡単だと思っているけども、実はここが一番難しい。逆にここの勘所を掴んだ人は、あとからスキルはいくらでも身につけていける。だからWebだとかモバイルアプリだとか、そういう区切り方自体もはやナンセンスで、必要に応じて学んでいけばいいものだと思っています。

秋葉: ハードウェアとソフトウェアとかで区切るのも、もはやナンセンス、ということですね。

久下: そうです。例えば、僕がすごく尊敬するインタラクションデザイナーで中村勇吾さんという方がいるんですけど、東大建築科を卒業した後に橋梁設計の仕事をやりつつ、Webもはじめた…というおもしろいキャリアをお持ちなんです。その後Flashで、2Dのビットマップ画像でアニメーションさせるのが全盛だったような時代に、アルゴリズムと無機質な描画だけで不思議な気持ちよさを出すというカルチャーを作り、それがインタラクションデザインの分野に多大な影響をもたらしました。


中村さんは、「構造」とか「気持ちよさ」っていうものに対するフェチなんだそうです。あの「気持ちよさ」って概念は、今のユーザインタフェースデザインにおける基礎の基礎だと思う。でも彼は元々Webの人でもなんでもない。気持ちよければメディアなんて何でもいいじゃん、と。まさに今の時代に求められる典型的な先輩みたいな人だと思うのですが、ああいう人が今後もっともっと増えていくんだろうなあ、と思っています。

近いところで言えば、Webの人がモバイルアプリケーション作るなんてのも、もう珍しくないじゃないですか。それくらいのスキルコンバートは今や普通だし、WebディレクターとかWebデザイナーとかWebエンジニアとか全部やってるよ、なんて人も普通にいたりする。今は電子工作がブームになっているので、これまでソフトウェアしか作ったことない人が、ハードウェアをプロトタイプレベルで作るというのも増えてきている。たぶん10年も経ったら、「肩書きを書きたくても書けない」って人がほとんどじゃないでしょうか。

秋葉: 僕も、「UIデザイナー」とか肩書きに付けたくないなあ…って気持ち、正直言うとありますね。

久下: 肩書きのせいで、勝手に狭く解釈されちゃいますよね。

Webデザイナー/エンジニアの仕事は変わる?なくなる?


秋葉: 最近ぼくも、電子工作にチャレンジしているんです。例えば最近、猫の自動餌やり機を作ってみたんです。そしたら、猫がその機械を攻撃するわけですよ。「ここから餌が出てくる」と学習しちゃって、餌欲しさに機械を壊そうとするんです。なんでそんな当たり前のことを、先に気づかなかったんだろう…って。 新しいことにチャレンジすると、「やってみなければわからない」ということだらけなのを実感しますね。

久下: チャレンジ、重要ですよね。一方でチャレンジ自体を否定する人たちもいます。何事も最初からうまくいくわけないのに、失敗を恐れてチャレンジしなかったり、人がチャレンジした成果をバカにしたりするのはカッコ悪いと思う。

今、ハードウェアスタートアップと呼ばれる企業が増えていますが、今はまともなものを作っている会社だって、昔はショボいものしか出せてなかったんです。でも、そうやってチャレンジすることで学びがあり、仲間ができ、だんだんいいものを作れるようになってくる。最初にクソプロダクト(笑)を出す、というステップを踏まないとそうはなれないわけで。

秋葉: チャレンジを否定することは、自分の可能性も閉ざしちゃうことにも繋がりますよね。


久下: だから、思い切って踏み出してみるというのは、とても大事ですよね。

僕はハードもソフトも扱うサービスをやっているおかげで、両方のカルチャーを行き来する立場なのですが、最近のIoTブームが面白い現象を引き起こしているな、と思っています。

というのは、ハードの人もソフトの人も「自分の仕事がなくなっちゃうんじゃないか」と危惧してるんですよ(笑)。ハードの人たちは「ソフトの人たちがハードを扱うようになる」、ソフトの人たちは「ハードの人たちがソフトを扱うようになる」って。

僕から見ると、Webの人たちは「情報」を扱うのがすごく得意ですが、モノを扱う人たちはそれが苦手だったりするので、お互いの得意不得意を補い合う関係になるだろうと思っています。

残念ながら、単発の技術的スキルで面白いものを作れる時代は終わってしまいました。でも僕は、「そういう時代がやっときた」という気持ちです。みんなで手を取り合って面白いものを作れるぞ、と。

プロダクトデザイナーという仕事


白石: 最後にお聞きしたいのですが「プロダクトデザイン」という仕事は、具体的にはどんなことをされているのでしょうか?

久下: 「プロダクトデザイン」という言葉は、実際にはとても広い意味を持つ言葉です。ただ一般的に言われている「プロダクトデザイン」というのは、多分「インダストリアル(工業、産業)デザイン」のことを指していると思うので、そういう前提でお話しますね。

とは言え、インダストリアルデザイナーの仕事もどんどん変わってきているんです。
90年代くらいまでは、基本的にはハードウェアエンジニアが作ったものを「スタイリングする」「お化粧する」という仕事が中心でした。そういう仕事は、依然として重要な仕事として存在してはいますけどね。

その次に、「その道具がどうあるべきか」「道具の内部構造がどうあるべきか」を考えるという時代が来て、エンジニアリングの領域もカバーするようになりました。今、大きなメーカーのデザイナーとかはこのフェーズにいると思います。


そして最近は、「そもそもデザインやエンジニアリングがどう使われるか」という統合的なストーリーを考えて、そのストーリーを実現までプロデューサーのように走らせるのが、今の若い世代のインダストリアルデザイナーの仕事です。


久下: 昔…90年代後半とかは、ストーリーを考えてスケッチを描き、モノとして成り立つかを確かめるためにモデルを作ったり…といった、「動かないもの」でデザインを説明するのが工業デザインの仕事でした。
最近はそもそも動くハードウェア – ホットモックと言ったりするのですけど – を用意して、それを組み替えたりしながら小さくしていくことで、エンジニアリングと一体になりながら「モノの形はどうあるべきか」を探っていくというやり方になっています。

中身と形を分けずに、そもそもひとつの体験としてどうあるべきかを探る。例えば素材を考えるといったところから、どうやったら理想的な形に加工できるかという「製法」を考えたり、どこで作ってもらうべきか、値段はコミットできるのか…といったところを総合的に考えながら、物質的な人とのインターフェースを考えていくのが、今の工業デザイナーの仕事なのかなと思います。

白石: 例えばCoineyでいうと、どんな仕事をされているイメージですか?

久下: まずCoineyは、定期的にモノがはけていくビジネスモデルです。カードリーダーを無料で配布するので、ユーザーが増えれば増えるほど部材を調達しなくてはなりません。
ただ、部品の調達ってかなり時間が必要で、平気で数ヶ月かかったりするんですね。だから、全体のリードタイムをきちんと見るということはやってますね。
僕らのサービスはリーダーが常に適切な量で生産されないと、顧客を獲得するという活動にも影響が出てしまう。なので、ユーザーの増加ペースに合わせて、工場の生産ラインを調整しています。

Coiney (コイニー)

Coiney (コイニー)はモバイル決済サービス。専用リーダーをモバイルデバイスのイヤホンジャックに指すと、デバイスがカード決済端末に早変わりする

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白石: 管理するという作業が主ですか?例えばCADでモデリングしたり…という作業はもう手がけられていない?

久下: いや、やってます。狭い意味でのデザインも、基本的には全部手がけていますよ。Webやモバイルのデザインについても、UXプロトタイプレベルまではぼくとデザイナーチームの方で作ります。ハードだけじゃなくて、ソフトも一丸になってやってかないとクオリティ高いものにならないので。僕の仕事は、Coineyというプロダクトにおけるユーザ体験のデザイン全体を引き上げることなんです。

白石: 実に広いですね。すごい。

久下: やはり物理的なオブジェクトを扱うサービスのデザイナーなので、オブジェクトに関わるデザインとエンジニアリングは基本全部手がける、って感じですね。会社のオフィスもデザインしましたよ。今いるこの会議室も、僕とFLOOATという仲良くしていただいてるデザイン会社でデザインしたんです。

久下さんがデザインされた会議室

久下さんがデザインされた会議室。「外国人がイメージする和室」をテーマにしたとのこと。黒く見える床も実は畳敷き。

おわりに


白石: では最後に、「IoT時代のデザイン思考」という記事の締めくくりとして、読者の皆様に対してお二人からメッセージをいただけますでしょうか?

久下: IoTの時代は、ハードウェアもソフトウェアも一緒くたになった、みんなが力を合わせて製品づくりをしていく時代です。個人的には、「やっとそういう時代が来たか」という感慨もひとしおです。せっかく、「いろんなジャンルの人が手を取り合って作る」というのが違和感のない時代になったのだから、みんな一緒になってどんどんモノづくりしていきましょう!

秋葉: これから、Webデザイナーも新しいことにどんどんチャレンジしていかなくてはなりませんね。そういう過程では、失敗事例もどんどん出てくると思いますが、みんながチャレンジしてみんなが失敗するのだから、それも許されるというのがIoTの時代だと思います。Just Do It!ですね。

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