小松 健作

WebSocket、WebRTC、ホームネットワーク、W3C標準化etc.
通信エンジニアの習性は「何でもつなぐ」── 小松健作さん

エキスパートインタビュー第二弾は、小松健作さん。NTTコミュニケーションズでHTML5、特にWebSocketやWebRTCなどの通信系の研究開発、W3Cの標準化活動に携わっています。通信技術のエキスパートである小松さんに、これまでのキャリアと最近の活動を聞きました。

Webのオープンに自由につながる世界観が大好き

──最近、WebSocketやWebRTCなどのWeb通信系に加えて、ホームネットワーク系のDLNA(Digital Living Network Alliance)に関する研究開発もされているそうですね。

通信系のエンジニアって、何でもかんでもつなぐのが大好きなんです。通信系のAPIってことで、WebSocketをやってきたけど、それがホームネットワークにも広がってきたってかんじ。これまでのWebは自分の端末をクラウドのWebサーバと繋ぐパターンがメインで、ホームネットワークの端末同士を繋ぐ用途には殆ど使われてなかったんです。このような用途には、主にApple TVやビエラリンクに代表されるような、各ベンダーに特化した連携サービスが使われています。

それが最近のWebではブラウザからテレビを操作するというような、ベンダーにかかわらず端末同士をオープンに繋ぐことができるようになってきました。オープンで自由につながるっていうのがすごく大好き。HTML5の中でも、Canvasなどの描画系技術も基本知識としては押さえているつもりだけど、どっぷりつかるのはやっぱり通信系ですね。

──なるほど。通信エンジニアの習性というか、好みを聞いたのは初めて。何でもつなぐのが大好きなんですね。僕的には、ホームネットワークとWebSocketって全然違う技術。なんで小松さんそこいったのかなと思ってたけど、「つなぐ」っていう共通点があった。

なんでHTTPからWebSocketに飛び込んだかっていうと、HTTPって結構制約が多いじゃないですか。あくまでも文章をダウンロードするための用途っていうか。つなぐという意味では自由がない。WebSocketはその制約がなくなって、クラウドと自分のデバイスを自由につなげられる世界が作られる。そうなるとすごく楽しいなと。ホームネットワークについてもベンダーに特化した仕様ではなく、Webとオープンに自由につながる世界観ができれば自然に面白いことができるんじゃないかなって思ってます。

磁気センサーからデータマイニングまで。幅広いキャリア

──小松さんって、キャリア的には通信エンジニアになるんですか?

白石編集長

白石編集長

う~ん…自分の専門職が何なのか語るのは難しいなあ。大学の時は磁気センサーのデバイスの研究をしていました。会社に入ってからは映像配信システムやCDN(コンテンツデリバリネットワーク)など、どちらかというとインフラよりのネットワークエンジニアを10年くらいやってきました。

でも新しいことがやりたくて、データマイニングの研究を始めました。テキスト解析など今で言うビッグデータに走ってましたね。そんな中、HTML5に出会いWebSocketで一番最初に作ったのがwakachiのデモ。当時社内の要望で、テキスト解析システムをHTTPインタフェースで作って欲しいと頼まれたんだけど、たった一つの文章でも下手をすると30秒ぐらいかかっちゃったり、これだと一億文書解析するのに100年かかっちゃう。それがWebSocketで処理すると、1時間か2時間くらいで分析できてしまう。WebSocketを使うと、簡単に業務課題を解決できると思って飛び込んだのが3~4年前です。

──小松さんはいろんなことをされてますよね。初めてお会いしたときは、Webサービス系をやってなかったでしたっけ?

Webサービス系もやってましたね。NTTの中でいろんな会社を渡り歩いていますが、新サービスを立ち上げる担当を任されることが多かったんです。NTT東にいた頃は、フレッツとか、ひかり電話とか…。Webに関しては、やれって言われたわけじゃなくて、すごいと思って個人的にやってたら仕事になったかんじですが(笑)。今はHTML5に関する事業を社内で立ち上げる役目です。通信系のWebSocketやWebRTC、ホームネットワークとか…ざっと挙げただけでも結構あります。

jQueryのように誰でも簡単に使いこなせる仕組み作り

小松健作さん

──ホームネットワークでいろんなデバイスが共通のプロコトルでつながる話を聞きたいです。将来的にはあらゆる家電にWebサーバーが搭載されると、それを連携させる仕組みや標準化も必要になりますね。

WebSocketやWebRTCをうまく活用して、リアルタイムコミュニケーションなどの双方向性サービスがもっと広がる形を作っていきたいと考えています。ただ、WebSocketやWebRTCを使うには新たにサーバーを立てなくてはいけないし、ネットワークの知識も必要だし、面倒なことが多いのも事実。そこを通信事業者としてサポートして、もっと気軽に使える環境を築いていきたい。例えばjQueryのように、誰でも簡単に使いこなせるようなもの。今のWebはjQueryが登場したからこそインタラクティブなものに発展しました。そういうチャレンジングな世界観を創りたいですね。

──その小松さんのビジョンには、すごく共感します。言葉にしちゃうとSaaSとかPaaS、BaaSになっちゃうのかもしれないけど、それとは違う。アプリを簡単に作れるようにとか、双方向に通信する次のWebを加速させるといったことのために取り組むという姿勢に感銘を受けました。WebRTCやWebsocketが当たり前の世界でないなら、あって当たり前の世界に変えていけば、Webがさらに進化する。時代の到来を早めようとしている気がします。

僕、性格的にせっかちなんです。そういう世界を先に見たくて(笑)。

標準化の活動。日本のデベロッパーにも参加してほしい

白石編集長

──小松さんが主導で進められたW3Cの活動についても聞きたいです。日本人でWebの標準化について語れる人はまだあまりいません。小松さんはどんなマインドで臨まれているのでしょうか。

世界から見ても日本のデベロッパーはとても高いポテンシャルを持っているのですが、これまでW3Cみたいな国際標準化団体を遠い存在に感じていたと思います。きっかけ、やり方のヒントがわかればそこに踏み出していけるはず。そう考えて、もっと世界に飛び立つための仕組みやベースを作りたかったんです。

──日本のWeb開発者とW3Cメンバーとの交流イベント「W3C Developer Meetup」をやってみてどうでしたか?

日本の開発者は、これまでW3Cと接触する機会が殆どなかったわけで、それだけでも意義が大きかったと思っています。みんな楽しんでくれていたことに一番の達成感を感じました。今後はこのきっかけを継続する仕組みを作らないといけない。コードは世界共通言語なわけですし、英語が得意でなくても標準化に貢献できるような形も作っていきたいですね。

いやらしいことを考えずにつぶらな眼(まなこ)で貢献をしていけば、何か成果が生まれてくるし、日本全体がよくなってくる。今までの自分自身の活動もそうですね。やらないより、やったほうが絶対よかった。「それって儲かるんですか?」ってよく聞かれるんだけど、金銭などのリターンを常に前提においてやっていたら今の自分はなかったと思ってます。

エキスパートメンバーで有機的なコラボレーションを

──最後に、今後の活動や「HTML5 Experts.jp」に対する抱負をぜひ!

エキスパートの人たちと意見交換や何かを作り上げたい。有機的なコラボレーションができたらいいですね。 執筆陣やレビュワー以上のつながりを作り出し、エキスパート同士のコラボでどんどん新たなWebの世界を引き拓いていきたいです!

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[エキスパート No.2 小松 健作]1972年生まれ。NTTコミュニケーションズにてネットワークとWebとの関わりや、インタラクティブマルチデバイスWebサービスに関する研究開発・標準化活動に従事。Google API Expert(HTML5)、Microsoft Most Valuable Professional(Internet Explorer)
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