5月29日、30日にかけてMicrosoftの開発者向けイベントである「de:code」が開催された。本記事では、Microsoftのエバンジェリストである西脇資哲氏のセッション「de:code参加者に捧げる最新Microsoftデモ・プレゼンの極意」について紹介する。
プレゼンテーション・デモとは
プレゼンテーションでは相手に、話をする、画像・動画・デモを見せる等を行う。このプレゼンテーションにおいて、重要なことはまず相手に伝わること、そして相手に伝わった結果、さらに重要なのが相手が動いてくれることだ。相手が動いてくれるとは、例えばプロジェクトについて説明した結果、相手が人・お金のリソースを出してくれる、ということだ。
このプレゼンテーションのテクニックとして、本セッションでは2つのテクニックを紹介する。1つはスピーチのテクニックで、もう1つはデモのテクニックだ。
スピーチのテクニック
スピーチのテクニックとは、魅力がある話し方・相手に伝わる話し方のテクニックである。
プレゼンテーションはテクニックである
世の中にはプレゼンテーションが上手い人・下手な人がいるが、上手い・下手を決めている要因は、生まれ持った能力ではなくテクニックである。
一般的に、「カリスマ性の高い人はプレゼンテーションが上手い」と言われることがあるが、それは逆で、プレゼンテーションが上手くなる努力をしており、プレゼンテーションが上手いから、カリスマ性が高く見えるのだ。
以下では、プレゼンテーションが上手くなるためのテクニックを紹介する。
最初の言葉と最後の言葉だけは決めておく
プレゼンテーションの最初の言葉は上手な人が多い。しかし、締めの言葉が下手な人がいる。一番最後の言葉が、ビシッと決まるプレゼンテーションを実施している人は非常に印象が良い。そのため、最後の言葉を決めておくとよい。例えば、「ご清聴ありがとうございました」でもいいし、会社でユニークな、製品にまつわるものでもいい。
事実(Fact)と意見(Opinion)
プレゼンテーションやデモで述べる内容には、事実(Fact)と意見(Opinion)がある。このうち、意見(Opinion)を伝えるのがプレゼンテーションだ。例えば、「情報漏洩は年間5万件起きている」と単に述べるのではなく、「情報漏洩は年間5万件おきており、これは大変な脅威ですね」と、意見を伝えるようにする。
プレゼンテーションでは必ず引用する
プレゼンテーションは、どうしても自分本位になりがちである。それは時には良いこともあるが、自分のプレゼンテーションのときこそ、周りや前後を引用する。
例えば、「私も先ほどの人と同じように…」のように述べる。もし、発表順でトップバッターであれば、「皆さんをはじめ、多くの人があまり経験のない…」のようにすると、プレゼンテーションが上手に聞こえる。
絶対時間と相対時間を織り交ぜる
時を表すセンテンスには、絶対時間と相対時間がある。絶対時間とは、例えば「2016年6月」という表現で、相対時間とは今を基準にした「2年後」のような表現である。
相対時間は言葉づかいのマジックの1つであり、相手の立場に立った表現となるため、相手に強い印象を持たせられる。例えば、「2時間後の今日9時に」は、相対時間と絶対時間を織り交ぜた表現となる。
言葉を修飾をせよ
センテンスは、名詞と修飾する言葉でできている。プレゼンテーションでは修飾する言葉を伝えるのだ。例えば、「皆さんは」とだけ言わない。「非常にスキルの高い開発者である皆さんは」と述べる。これにより、プレゼンテーションがカッコよく、リッチに聴こえる。
このテクニックは日常でも使われている。レストランにいくと、メニューには単に「サラダ」とは書かれておらず、「シェフの気まぐれサラダ」というように修飾されている。
3つの語尾
プレゼンテーションでは、センテンスの語尾が重要になる。
体現止め
名詞でビシっとセンテンスを止める方法だ。例えば、「我々はこうやって危険性を指摘してきたのです」ではなく、「我々が行ってきたのはとても重要なことです、そう、危険性の指摘」のように述べる。
質問と回答
自ら質問して、自ら答える方法だ。例えば、「今日はなぜiPadを使っていると思いますか? カメラとして使うのです」のように述べる。
魅力の語尾
魅力的な言葉をセンテンスの最後に残す方法だ。例えば、「1024段階の筆圧感知をするスタイラスペン」は、普通の言い方だが、「こちらのスタイラスペン、1024段階、高精密・高精細です」とすると、魅力的なキーワードが最後に残る。
催眠効果を植え付ける
プレゼンの中盤や後半で、「だんだん皆さん理解して、わかりやすくなりましたよね」と話すと、相手が理解が深まったかなぁ、というように感じる。これはTV、情報番組でよく利用されるテクニックだ。
もし、相手に伝わってなかったら、相手は質問してくる。相手に伝わったという印象を持ってもらうほうが重要なのだ。
一般的にやってはいけない事項
若い男性に多い行為で「たとえばー」「今日はー」のように、単語の後の母音強調があると、だらしなく聴こえる。
また、エンジニアに大変多いのは「はいっ」と述べてしまう癖だ。スライドがめくれるたびに「はいっ、続いては…」のように、話すとカッコ悪く聴こえる。これを、直すのに便利なテクニックとして、スライドが先ではなく、しゃべりを先にする方法がある。
つまり、自分が話し始めてから、ほんの少し遅れてスライドが表示されることで、自分がプレゼンテーションをリードするようにする。なぜ、こうするかというと、先にスライドを出すと、相手はスライドを先に読んでしまい、スピーカーの話を聴かなくなってしまうからだ。
デモの極意
これまで、スピーチのテクニックについて説明してきたが、デモのテクニックについても説明する。
Touch Feedbackを利用する
Touch Feedbackとは、指でどこを押しているところが分かるという、Windows OSの持つユニークな機能である。TouchFeedbackで、コントロールパネルから設定可能だ。本機能はWindows Phone8.1でも設定可能だ。
ピクチャーパスワードを設定する
ピクチャーパスワードとは、Windows8の特徴的なパスワード機能で、線や丸、タップといったタッチ操作の組み合わせで、ユーザー認証を実現する仕組みだ。画像には、動物や圧倒的に美しい景色を入れてほしい。
デモは画面の上半分でデモをする
人間の特性として、画面の上のほうでおきていることは、素早く綺麗に見える。そのため、デモは画面の上半分で行うべきだ。
画面の下に目がいくと、タスクバーに目が行きがちになるので、画面上部での操作が良い。
より自然に見せるため拡大と蛍光ペン
Windowsの標準機能や、ZoomIt等の拡大の機能を用い、さらに蛍光ペン(マジカル・ペンシル等)を用いて、視点誘導することで、デモンストレーションが綺麗に見える。
マウスは動かしすぎない
マウスを動かしてはいけない、なぜならば見ている人が追ってしまうからだ。講演者が緊張するとマウスを動かしがちだが、説明しているときはなるべく動かさない。
タッチは一瞬で行わない
タッチは一瞬で行わず、場所を特定するようにすることで、相手が何を押しているかわかるようになる。たった一秒のテクニックだが、デモが上手いように見える。
画面を読み上げよ
デモの上手い人は「画面にあるオレンジ色のタイルであるムービーショータイムを…」のように具体的に述べる。その結果、プレゼンテーションが分かりやすくなり、デモが上手く見える。単に「映画を見てみようと思います」とは言わない。
ショートカットはみせよ
Ctrl+Cなどのショートカットは便利だが、右クリックでメニューを出して、コピーをする。なぜならば、ショートカットを使うと、見ている人がわかりにくいからだ。
プレゼンテーションでは、見ている人が何をやっているか分からないと意味がない。
プレゼンテーション・デモ中は空白は作らない
空白を作ると、「製品が遅い、止まっちゃった?」という緊張感を相手に与える。また、それにより自分にも緊張感を与えてしまう。
プレゼンテーション・デモ中では、話していれば話しているほど、相手は早く感じる。
競合製品は使わせていただく
「Aの機能はBの機能より劣っているからダメ」というように比較するのではなく、機能の有無の違いやコンセプトを説明する。時には競合製品の方が出来が良くてもいい。
機材の特性、技術の特性を伝える
例えば、Bluetoothを使うのであれば、ケーブルレスであることを強調する。
また、データの転送が何秒でされるか事前に把握して見せる、相手に機材の特性・技術の特性を伝える。
単純なことでも大胆に、華麗に
例えば、プレゼンスという機能がある。退席中をLyncのプレゼンスを出すために、実際に、ノートブックを閉じる作業を見せることで、Lyncのプレゼンスがオフラインになるのを、見せる。
最後に
本セッションでは、スピーチのテクニック、デモのテクニックについて、お伝えした。本セッションの内容が皆様のお役に立つことを願っている。
(編集部注釈)
本記事は実際にプレゼンテーションを行った西脇氏の許可のもと作成されています。