加藤拓明

及川卓也さん、河合良哉さんに聞いた「地方で日本で働く・海外で働くの話」(その2)──HTML5 Conference 2016セッションレポート

HTML5 Conference 2016の展示ブースでお届けしたカンファレンス ラジオコーナー。Increments及川卓也さんとヤマハ河合良哉さんがゲストに来てくれた「地方で日本で働く・海外で働くの話」を完全版テキストの後編をレポートします!

日本と海外の違いの話

前編に引き続き、ゲストはIncrements及川卓也さんとヤマハ河合良哉さんです。


「実際に今年海外に行かれて困ったことや、こういうところが違うの?とか、びっくりしたエピソードがあればお聞きしたいのですけれど、何かギャップとかありますか?日本のカルチャーと(比べて)」


「ギャップですか?」


「はい。例えば、僕が一番気になるのは食べものとかです。海外の姿は想像ではあるんですが、日本だとそこらへんに自動販売機やらコンビニやらがあって、買いたいジャンルのものがすぐに手が届くところにいっぱいある。たぶん海外というか、今お勤めされているサンフランシスコは土地も広いこともあるし、そういうのはないんじゃないかなって思って。


「そうなんです。そこおっしゃる通りで、日本に帰ってきていつも便利だなって思うのがコンビニエンスストアの存在なんですね。アメリカにもコンビニエンスストアはあるんですけど、そこに陳列されているものが全然違ってるんです」

「日本だとちょっと小腹がすいたなって思うとおにぎりだったり、サンドイッチや菓子パンは大体100円とか200円くらいで手に入るというのが大体じゃないですか。向こうに行くとおにぎりとか、サンドイッチとか…おにぎりはないにしてもサンドイッチとかは結構な値段しちゃったり。買って食べると、えっこれすごいまずいみたいなのがあったりして。気軽に買えないんですよね、怖くて。逆にがっかりしちゃうことがあるので(笑)」


「こっちで買うような気持ちで、サンドイッチ買うっていうことはできないんですね」


「やめたほうがいいかなと(笑)。そこは日本に帰ってきてすごい便利だなと思いつつ、便利すぎて日本に帰ってくるといっぱい食べちゃうんで、夜寝るときなんか胃がもたれてるなとか」


「なんかアメリカのそういったコンビニにとかで売ってるやつって、見た目からしてまずそうですよね」


「そうですね」


「見た目あまりこだわらないじゃないですか」


「こだわらないですね」


「こだわるときはなんかカラフルな感じになっていて、これはこれで食べたらまずそうな感じだなって(笑)」


「本当M&M’sの配色の感じですよね。もうすごい赤とか、すごい黄色とか」


「なんか脳の奥の方でこれ食ったらダメだよって、自分に語りかけてるようなものしかないんですよね(笑)」


「そうですね(笑)」


「色に対する感覚が違うんですかね?」


「原色が好きなんじゃないですか?知らない(笑)」


「原色系本当多いですよね。例えば食べ物の話じゃないですけど、MicrosoftのWordとか開いて、1番最初に図形とかパッと入れるとすごく緑の色が出てきたりするわけですよ。これすごい昔から不自然だなって思ってたんですけど、アメリカのそういう食材とか見ると、なるほどなって逆に納得しちゃって(笑)」


「そういうことですか」


「おそらく。だから色に対する感覚が、日本人と違うところは間違いなくありますよね」


「やっぱり、普段慣れ親しんでいる色がそういう配色のものが多いという環境による要因なのか、人種による気質がそうなっているのかというと、どっちなんでしょうね?それはわからないですね」


「どうなんでしょうね」


「とりとめのない質問をしてしまって、今は反省しています」

年齢が違う人とのコミュニケーション


「この後、僕らはどこにいく感じになるんですか?」


「えっとですね…」


「別に早く終われって言っているわけじゃないですよ。まだ全然話してもいいんだけど、この議論はどこに流れ着くのかなと思って(笑)」


「本来僕がここでやらなきゃいけないのは、ゲストのお二方の面白い話を伝えないといけない」


「今ね、加藤くんが面白い人になっているから(笑)」


「ごめんなさい。では、みんなが聞きたいんじゃないかなって思ったことを及川さんに質問していいですか?」


「いいですよ」


「去年転職されて大きく環境が変わったと思うんですけど、お若い方が多い会社に入られたじゃないですか。年齢が違うと、共通の話題だったり当時流行っていたものも違うと思うんですけど、年齢が違うことでコミュニケーションが難しい部分があったりするんでしょうか?」


「たぶんね、みんなが気使ってくれるんですよ。だからあまりそういうので困ったことはないですね」


「なるほど(笑)」


「長老が入ってきたという感じで、一生懸命おじいちゃんから聞いた話とかを思い出して話してくれるから」


「皆さんとは飲みに行ったり、遊びに行ったりするんですか?」


「そうですね。でもね、真面目な話わからないというか、今同じ世代でも趣味が違ったら全然話通じなかったりしません?昔って、視聴率30%取ったようなドラマがあったらみんなそれ見てるとかってあるけど、今は高校の時見てたドラマで全員に絶対通じるものってなかったりすると思う。趣味が違った人とはあまり通じないっていうことは、普通だったりするんじゃないかなって思うんですよね」


「なるほど」


「あまり困らないし、わからなくても別に気にしないし、そこで教えてもらえればいいかな。それ何?って言って、あーそんなのあったんだ、その頃俺何やってたかなー?みたいな感じで。で、気にせず僕、昔の話ガンガンしますから(笑)」


「素直にやり取りできるのってすごく大事ですよね。そういった謙虚さってすごいです」

新しい技術に対する取り組み方の違い 


「僕は仕事が変わって、学生とやり取りすることが多くなったんですけど、彼らってどんどん新しいことをやろうとするのに物怖じしない子が多いなと思って。新しい言語が出たら、『よしやってみよう!』ってやるんですけど、僕だと『これいつまで使えるのかな?』とか、『実際これ覚えたとして何の役に立つんだろう?』とか考えてからやっちゃうんですよ」

「彼らは、『それ面白い使ってみよう、動いた!』って。で、どんどんやっていくっていうので、なんか自分歳をとったなって感じることがあって。一概にそういうわけじゃないですけど、年齢が離れれば離れるほど物事に対する取り組み方って変わってくるのかなって思って」


「でも、技術がずっと使われるかどうかなんて全然わかんなくって、僕だって大学時代に使ってたのってFortranですけど、今Fortranなんて全く忘れてる。10年くらい前Web系のやつやっていた時はPerlだったけど、Perlもほとんど覚えてないし、その時にFortranが自分の30年後、40年後も使ってるかなんて考えたこともないし」

「Perlの時だって別にそこまで考えたわけじゃなくて。そこはあまり気にしないし、逆に、大きく内容が違うならともかく、技術ってどこかで関連性があるから一つの技術を覚えた時に、ここの応用だとか、これはここでいう何だっただろうってことを考えるだけで飲み込みが早いってことは多いと思うんですよ。プログラム言語じゃない話をすると、僕OSを作ってたわけですよね、Microsoft時代に」


「はい」


「今Webブラウザって結局はOSなんですよ。中でやっているものっていうのは、普通にスケジュール管理みたいなものもあれば、スレッド管理みたいなものもある。メモリ管理みたいなものもあるし、ガベージコレクションどうしようとかっていうところとかって中で普通にガチガチ入ってたりするわけですね」

「そうすると、ブラウザがOS化してくっていう流れになった時に、OSを作っていた時のいろんな知識だとか経験って役に立つんですよね。たぶんそれプログラム言語でも一緒ですし、ネットワークプロトコルでも一緒だし、なんでも同じだと思うんですよ。例えば、ネットワークって昔TCP/IPが流行る前とかっていうのは、普通にシリアルコネクタRS232Cっていうのがあったんですよ」


「はい」


「その上で、パソコン通信のためのやり取りだとか、ファイル転送のプログラムがあるわけですよ。Kermitって言われているのがあって、僕はKermitをあるプラットフォームに移植したんだけれども、そこでやっているプロトコルのいろんな手順で、結局はその後TCP/IPで見た時に同じ様なことをやっているんですよ」

「結局はウインドウ制御みたいな話が出てきたりとかっていうのは、基本は一緒なんですね。ヘッダーがあってトレーラーがあってだとか、あとはチェックサムだかなんかをつけて、ちゃんとそこのところのデータの妥当性をチェックしてますみたいな当たり前のところっていうのは、どんなプロトコルになったってそんな変わらなかったりするんですよね」

「なので、一旦覚えたってやつが完全に無駄になることはないと思うんですよ。そのままその技術が使えるかっていうとそれはこの世の中だし、これだけ技術が早いんで、それは期待しないほうがいいとは思うけど、なんかで流用できるし、生きてくるんじゃないかなと思います」

「なんかこれエラー発生しましたけど大丈夫ですか?」


「これは…よくないエラーですね」


「じゃあ、僕らは会場にいる人に語りかけましょう。会場限定!」


「YouTubeの配信の方が今壊れてまして」


「配信の方は申し訳ないです」


「聞こえてないですけどね、配信の人には(笑)」


「そうですね(笑)」


「河合さんはなんかそういうのないんですか?僕はいいことばっか言っちゃったけど、こういうのを見て、その技術には取り組んだ方がいいかもしれないけど、それはちょっと流石に慎重になった方がいなって思うようなものとか」


「まだ僕はおそらく経験が浅すぎていっぱい取り込んでる方だと思っているので、そこまでのところはないですけど、おっしゃった通りです。1つ学んだことっていうのはそこで学んだものが終わったとしても死ぬわけではなくて、必ずどこかで生きてくるっていうことが所々感じるとこはもちろんある。だからやっぱり物怖じしてやらないというよりは、やってしまった方が面白いんじゃないのかなっていう気はします。私事をお話しするんですけど、このWebBluetoothを始めたのは1カ月か2カ月くらい前なんですよ」


「そうなんですか」


「面白そうだなっては思っていたんですけど、やれる機会があまりなくて、まあちょっとやってみようって始めてみて、もちろんまだGoogleのChromeしかおそらく対応していないので、このあと使える技術かどうかなんてわからないわけなんですよ。なんですけど、やっぱり面白いからやってみよう感じになっているので」 


「そうそう!だからその技術がなくなっちゃうっていうことを恐れている人は、会場にもいたんですけど、あんどうやすしさんっていう人がいるんですね。知っていますか?」


「はい!」


「彼ね、今日ね、引っ張り出したっていうウエーブ(Google Wave※)のTシャツ着てきてましたから。ウエーブ本出したらウエーブがシャットダウンすることになって、シャットダウンのアナウンスがあった数日後に出版になったっていうね(笑)。人生で一番不幸な人みたいな。なんか彼が取り組んだ技術はだいたいdeprecateされるっていうDEATH NOTEの生き証人みたいな人がいるんです。でも全然恐れていないで、いろんなことどんどんやってますよ」


「なるほど。これからはそういう姿勢をとっていった方がいいことが多いかもしれませんね。学生のやり方を見て僕がいいなと思ったのが、Webの質問サイトとかに質問をたくさん書いていたんですよ。それが1個2個じゃなくて10個20個とかすごく書いていて、調べて分からなかったらすぐに聞いてどんどんやっているんだって思って」

「まとめたものがあったらまさしくQiitaとかに書けばいいし、そうすると最新の技術が出てきた時に、早めにキャッチアップできてQiitaみたいな記事が書けると、みんなに注目されて界隈で目立てるというか、そういうプラス面があるじゃないですか。その姿勢ってすごくいいなって思いました。スモールスタートというか、物怖じするんじゃなくて、面白そう、ちょっとやったらできるんじゃないか、頑張ってやってみよう、わからなかったら周りに聞こう、まとめたらアウトプットしようみたいな、そういうエンジニアになっていくのがいいんじゃないかって」


「でも技術者って、基本面白いからその技術に取り組むんじゃないですか?例えばArduinoだとかRaspberry Piとかも、今でこそIoT的に使えるかもしれないけど、最初はただの電子工作じゃないですか」


「いわゆるおもちゃみたいな位置付けだったんですよね」


「すべての技術はおもちゃから始まるんですよ。僕それもうずっと言っていて、要はイノベーションのジレンマっていう話あるじゃないですか?あの破壊的イノベーションっていうのは、基本的にその時にその業界において、ほとんどおもちゃって思われているやつなんですよ。メインフレームがあった時に、僕がいたDECって会社が作っていたミニコンっていうのは、ほとんどおもちゃみたいなものなんですね。ミニコンとかがある程度出てきてダウンサイズが見えた時にもうワークステーション、さらにそれ飛び越えてパソコンなんておもちゃなんですよ」

「当時のNECの98シリーズを作った時に、おそらくNECの98をやれって言われていた技術者の人は、メインフレームをやっていた時に、そこに部隊異動になったら勘弁してくれって思うわけですよ。ほとんどおもちゃって言われていたのが、あっという間にメインストリームの技術を追い越していくっていうのが破壊的イノベーションなんですね。基本おもちゃっていうところで、これ面白いっていうのが実は人が集まってきて育っていくと、それがメインストリームになって、今までの事実を置き換えていくということが起きているんですよ」

「みんなが面白いって思っているやつとか、さっき言った生き残るかもっていうのは何かあると。生き残るかもしれないっていうのは、確率論でいうとあるかもしれないですよ」


「そこにいろいろ面白い展示がありますけど、WebのMIDI関係今一番面白いなって思っていることってどういうことですか?」


「面白いなって思っていることですか?」


「さっき及川さんが、空間の?概念がWebで表現できるって、そしたら音もその空間、例えばちょっと動いたらそっちから聞こえるっていうそういう表現ができたりっていう風になっていくんでしょうか?」


「この間Chromeの方に実装されたJUMP(※)っていう、Googleの出している専用のプラットホームでしか見られない映像でしたっけ?音響をWebブラウザ上で再現できるようになっていて、そのJUMPでフォーマットで録られた音声は3Dの音響でちゃんと聞けるっていう状態になっていたりします」


「もうそういうことができる時代になっていたんですね」


「そうですね。だいたい音って、結構最初は取りかからないんですよ。最初は映像が入って、目で見る方が完成し出すと、音ができるみたいな。WebオーディオとかMIDIもそうだったんですけど。Canvasが動くようになって、WebGLが動くようになって、じゃあは次は音だろってみたいな流れになるわけですよ。音ができると、その次は3Dだという話になるわけですよね。CanvasからWebGLになったみたいに。今その流れがきているかなって感はありますけどね」


「なるほど」


「最近WebVRとか言ってWebブラウザ上でVRができるようなフレームワークができていたりするんですけど、そこは面白いかなっていう気はします」

  • Google Wave:過去に米グーグルがサービス提供していたコミュニケーション及びコラボレーションツール。2010年5月にはサービスを一般公開したが利用者が増えず、同年8月4日に開発中止を表明。サービス自体は2012年4月末まで継続された。
  • JUMP:グーグルが提供するVRコンテンツ作成システム

まとめ


「この後13時からセッションされるんですよね?」


「そうですね。13:20ですね、そろそろ」


「そちらの方で今のような話とかも?」


「そうですね。まさに今頭の中でそこで話す内容ちょっと話しちゃったな、みたいな。どうしようみたいな感じだったんですけど(笑)」


「今ここで先にお話ししてしまったかもしれませんが、その話も聞けるということなので、ぜひご興味ある方は河合さんのセッションをご覧になってみてはと思います」


「よろしくお願いします」


「準備のお時間もありますよね、すみませんでした」


「いえいえ、13:20からなんで大丈夫です。おそらくまとめをするとなると、とりあえずやってみろっていうことですよね。口で言う前にとりあえず手を動かしてみろと。それが自分を作るっていう感じなんですかね?」


「純粋に面白いんじゃないじゃないですか?学生さんもきっと面白いと思ってやっているんで。逆に言うと、なんで加藤さんやんないのかなっていう(笑)」


「なんかちょっとひねくれているんでしょうかね?」


(笑)


「ごめんごめん、いじめたかったわけじゃないから(笑)。元気出そうよ!なんかツラいことあった?」


「いえ、大丈夫です」


「今日夜行のバスで福島から来てるんですよ。おそらく疲れてらっしゃる」


「なるほど」


「すみません、多大なフォローをいただきありがとうございます!」


「いえ、とんでもない」


「すみません、スピーカーを入れていただいた方もどうもありがとうございました。この辺りで、第1回目は終了したいと思います」


「ありがとうございました!」

ラジオブースで放送した全ての内容を動画で公開!

放送1回目だけでなく、ラジオブースで放送した全ての内容を動画でも公開中です。「地方で日本で働く海外で働くの話」は、動画の[3:03:38]-[3:50:50]です。

  • 「地方で日本で働く・海外で働くの話」 by DJ KATO [ゲスト:及川卓也さん、河合良哉さん]
  • 「ハードウェア楽しいですよね」 by DJ KATO [ゲスト:中川友紀子さん、羽田野太巳さん]
  • 「ハートブレイクカフェ」 by DJ KATO & 物江修さん

(撮影・写真提供:HTML5 Conference 2016撮影スタッフ)

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