こんにちは、HTML5 Experts.jp編集部の馬場美由紀です。今回は最新技術ではなく、1990年代と2000年代の懐かしいWebテクノロジーを語り合おうという座談会をやってみました。略して、懐テク。
ゲストの皆さんたちの思い出とともに振り返り、ただただ懐かしもうという企画です。
「懐かしさ」には個人差があるので、「その技術はまだ懐かしむ段階じゃない」という技術も含まれているかもしれません。そこはどうかご笑覧ください!
豪華なゲストの皆さんはこちら!
“風呂芸人” 増井雄一郎さん
大学時代に起業し、Webサイト制作などを行う傍ら、PukiWikiなどのオープンソース開発にも積極的に参加。2008年に渡米し、iPhone向け写真共有アプリPhotoShareをリリース。2010年に帰国し、アプリSDK『Titanium Mobile』の伝道師として活動。2012年9月に退職、株式会社FrogApps(現 ミイル株式会社)を設立しiOS/Android向けにミイルをリリース。
現在は2013年に起業した株式会社トレタにてCTO。個人活動としてMobiRuby, wri.pe, Kitayonを作成。趣味はお風呂でコーディング。
“老害王” 古籏一浩さん
来月出版される「みんなのIchigoLatte入門 JavaScriptで楽しむゲーム作りと電子工作」は61冊目の著書。本の執筆以外にも4K映像など、いろいろ手がけている。詳しくはこちらのWebサイト「OPEN SPACE」をどうぞ!Twitterのプロフィールによると、「古くはMZ-700な人。途中はDTPな人。その後JavaScriptな人。次は映像とか。その後は小売業」とのこと。遠方在住のため、今回はオンラインでの参加。
“デスノート” あんどうやすしさん
Google Developers Expert界のジェロニモ。航空工学科を修了後、訳あって畑の違う業界に行くも一年半で退社。その後、7年ほどSI企業の下請け業務に従事したが、いろいろ辛くなりイギリスに1年ほど留学。以降は主にB2C企業を転々とし、現在は株式会社カブクで主にThree.jsを雰囲気で駆使してそれっぽいものを開発中。二つ名はGoogle Waveをデスノートしたことによる。
モデレーター HTML5 Experts.jp編集長 白石俊平
株式会社オープンウェブ・テクノロジー代表取締役。ITエンジニア向けニュースキュレーションサービス「TechFeed」の開発と運用を行う。 日本最大級のHTML5開発者コミュニティ「html5j」ファウンダーを務め、Web先端技術の啓蒙、発展に尽力。Google社公認Developer Expert (HTML5)、Microsoft社公認Most Valuable Professional (IE)を歴任。著書に「HTML5&API入門」、「Google Gearsスタートガイド」、監訳に「実践jQuery Mobile」など。
はじめてWebと関わったきっかけは?
白石:まずは、皆さんがWebと最初に関わったきっかけから聞かせてください。
増井:僕が最初にWebを触ったのは、大学生になったばかりの1994年頃。北大の研究室にインターネットにつながっているパソコンがあって、世界の情報を見ることができるという記事を新聞で見つけて、その新聞社に電話をかけたんですよね。連絡先を聞いて、研究室に行って見せてもらったのが最初ですね。
大学は文系だったけど、パソコン通信にはまってました。その当時から20年間、Webに丸一日つながなかった日は一度もないんじゃないかってくらい、Webにどっぷりな生活を続けてます。
白石:古籏さんは「JavaScriptポケットリファレンス」とか、死ぬほど本を書かれていて、Webをやっている人なら、一度は古籏さんの「OPEN SPACE」とか見たことがあるんじゃないかな。僕も大変お世話になりました。
古籏:今はもう役に立たないけどね。老害王ですから(笑)。僕はNIFTY-Serve(※)でパソコン通信をしていたんだけど、データが送れなかったので、インターネットを始めたのが最初のきっかけです。
※NIFTY-Serve(ニフティサーブ):1987~2006年までニフティが運営していたパソコン通信サービス
白石:それっていつくらいのことですか?
古籏:1996年1月ですね。当時、Mosaic(※)よりも先にNetscapeを友だちに見せてもらって、画面がモザイク状に見えるからMosaicっていうんだねって会話をした記憶があります。なんでWeb系にいったのかというと、ゲームを作るために会社を辞めたのになかなか作る手段がなくて、手近なWeb系に走ったんですよ。JavaScriptを学んだのもゲームを作るための手段の一つでした。
※Mosaic(モザイク):NCSAが開発したWebブラウザ
白石:古籏さんが、ゲームを作るために会社を辞めてたのは知りませんでした(笑)。ちなみに古籏さんが本を書くのが超絶早いんです。最新の書籍「みんなのIchigoLatte入門 JavaScriptで楽しむゲーム作りと電子工作」は61冊目の著書だそうです。
そういえば、古籏さんがオンラインでもイベントに登壇されるのってレア感ありますよね。お仕事の関係でなかなかこっちに来れないから…って、本業のこと言っていいんでしたっけ?
古籏:はい、長野で配達業をしてるんで、なかなかそちらには行けないんですよ(笑)。
あんどう:僕もWebに関わったのは、大学の研究室に入ってからですね。20年くらい前かな。初めてプログラミングしたのはJavaScriptで、マインスイーパー(※)を作ったのが最初です。航空工学科卒業して全然違う畑の仕事したんだけど、合わなくてすぐ辞めて、SI企業の下請けでVBで作られたものをブラウザで動かすみたいな、つらい仕事してました。ここ10年くらいはBtoCの仕事してます。
※マインスイーパー:1980年代に発明された、地雷原から地雷を取り除コンピュータゲーム。
白石:プロフィールに「二つ名はGoogle Waveをデスノートしたことによる」ってありますけど。
あんどう:前に及川さんの記事で、取り組んだ技術はだいたいdeprecateされるデスノートみたいな人って書かれてたので、使ってみました。Google Waveは2010年に本を書いたら、出版の2週間前にこれから書店に並びますよってタイミングでサービスが終了したんです。本が2500部くらい刷り上がっていたのに…。そのことがネットで話題になって。
増井:あの本は売れたんですか?
あんどう:こわくて聞いてないです。
古籏:でも、本が出たときはまだサービスやってたじゃないですか。
あんどう:まあ、今なら聞きたいですけどね。編集者さんが刷り上がった本を会社に持ってきてくれたんですけど、気落ちしてるんじゃないかって心配して、菓子折りと一緒に持ってきましたから。
白石:僕はWebと関わったのはすごく遅くて、2000年代なんです。就職した2001年からJavaプログラマとして、Java ServletとかJ2EEとか使ってました。2007年に独立してWebのフリーライターとかやってて、Web2.0ブームの時代は記事や本を書いてましたね。
ということで、豪華なゲストと一緒に、1990年代と2000年代のWebを懐かしみましょう!
【90年代】当時、何してた?
白石:JPNICのインターネット歴史年表を見ながら、振り返っていきましょう。90年代後半くらいからいきますか。皆さん、90年代って何してました?
増井:僕は高校生のときからプログラミングやってました。初めてインターネットに触ったのはNIFTY-SERVEのTELNETサービスで、英語も分からないのにGopher(※)とか触ってました。
※Gopher:ミネソタ大学が開発したテキストベースの情報検索システム
白石:ゴーファー?ゴーファーって何ですか。僕、昔のことあんまり知らなくて。
増井:World Wide Web(略名:WWW)よりもっと前のプロトコルですね。NiftyのTelnet Gatewayでつないで、国立がんセンターに入ったマシン経由で、Gopherや別のサーバーのテキストブラウザが見れたので、パソコン通信とかしてました。94年頃かな。
僕は当時、国立がんセンターと理研をよく使ってました。あとはTelnetでチャットサーバーに接続するとかもよくやりましたね。
白石:Webブラウザに最初にさわったのはいつくらい?
増井:94年か95年くらいですね。さっき言ったけど、たぶん北海道大学でMosaicをさわったのが最初じゃないかな。アメリカの大学の先進的な研究所などの情報がちょっと見れたくらいですけど。
TCP/IPのスタックをパソコンに入れるのも大変でしたね。Trumpet(※)とか使ってました。
※Trumpet Winsock:Windows 3.1で、インターネットに接続するためのソフトウエア
白石:全然何いってるのかわかんない(笑)。
増井:Windows 95でTCP/IPが標準装備されたんですよ。Windows 3.1はホント大変でした。
あんどう:僕はWindows 3.1から使ってましたけど、なんも苦労してないですね。あんまり記憶ない。
増井:Windows 95になって画期的に良くなって感動しましたよ。
古籏:Windows 95、まだ持ってるよ!(と、パッケージを見せる)
増井:Windows 95は並んで買いましたねえ。そこでWindowsのビールとガムもらいました(笑)。
古籏:未開封のIE 3.0もあるよ!
全員:おおおおーすごい!
白石:今回は懐テク・ブラウザ編なので、ブラウザ周辺を中心に懐かしんでいこうと思います。
増井:僕が覚えてるのは、IEは3(Internet Explorer 3)からかな。
白石:古籏さんもそうですか?
古籏:いや…、僕は自作でしたから。
白石:えっ、自作って何を??
古籏:MZ-2861というマシンがあって、RS-232C経由でもってきてテキストブラウザを自作してました。Software Designの2月号でMZ-2861の特集があったんですけど、あのマシンは僕のです(笑)。
MZ-2861のHTML Viewer (BASIC)でてきました。多少文字化けしてますが(これは仕方ない。mzと文字コードが違うから)、こんな具合でした。
1000 '
1010 ' HTML viewer for MZ-2861
1020 ' Presented By OpenSpace/KaZuhiro FuRuhata
1030 '
1040 on error goto ERR
1050 def int A-Z
1060 dim TXT$(1024) :' Max EDITOR line
1070 dim JUSTIFY(1024) :' ð¦ÚûíÃæâu (0=left,1=center)
1080 dim HLINE(1024) :' Hair Line (0=none,1=ON)
1090 dim STYLE$(1024):' STYLE (BOLD=bit0,ITALIC=bit1,UnderLine=bit2)
1100 dim LINK$(1024):' A HREF link Address
1110 dim LINK_X(1024):' A HREF link point of x coordinate
1120 dim LINK_Y(1024):' A HREF link point of y coordinate
1130 dim CSRX(1024):' Link Cursor X
1140 dim CSRY(1024):' Link Cursor Y
1150 dim CSR$(1024):' Link Cursor Link Address
1160 ERM$="MZ2500"
1170 cblock 0
1180 *ERR_MACHINE
1190 MACHINE$=ERM$
1200 gosub *SET_SCREEN
1202 *RELOAD0
1210 gosub *GET_FILENAME
1220 *RELOAD
1230 gosub *ANALYZE
1240 for I=ML to ML+24:TXT$(I)="":next
1250 gosub *MENU
1260 goto *RELOAD
1270 '
1280 ' žöæí¶ÅÉœÅÈ
1290 '
1300 *SET_SCREEN
1310 init "crt2:640,400,16"
1320 init "crt1:80,25,1,0"
1330 cls 3
1340 BGCOLOR=1:LTX=-5
1350 '
1360 ' °ª°j°·ª[íð`ž
1370 '
1380 *DRAW_MENU
1390 line (0,0)-(639,399),1,BF
1400 line (0,0)-(639,316-1),7,BF
1410 line (0,316-1)-(639,316-1),0
1420 locate 0,0:print "TITLE:";:color 5:print left$(TITLE$,70);:color 7
1430 locate 0,1:print " URL:";left$(URL$,70);
1440 cflash 1:locate 0,2:print "now loading...";:cflash 0
1450 return
1460 '
1470 ' °t°@°C°Ñö¹íãŸ÷ê
1480 '
1490 *GET_FILENAME
1500 locate 0,2:print spc(79);
1510 locate 0,2:input "FILENAME:";FILENAME$
1520 if right$(FILENAME$,4)<>".htm" then FILENAME$=FILENAME$+".htm"
1530 URL$="http:"+FILENAME$
1540 return
1550 '
1560 ' HTMLíÅÝÆê
1570 '
1580 *ANALYZE
1590 '----------- Auto File Type Check --------------
1600 if left$(URL$,5)<>"http:" then return
1610 open "i",#1,FILENAME$
1620 line input #1,PARA$
1630 gosub *GET_CASE
1640 FILETYPE$="HTML"
1650 if left$(A$,6)
※MZ-2861:シャープのMZシリーズに属する1987年に発売された16ビットパーソナルコンピュータ
【90年代】初めてWeb向けに書いたCGIは?
白石:じゃあ、時系列で振り返っていきましょうか。93年はMosaicとHTMLバージョン1.0が公開されてますね。ということは、93年がWebのスタート地点ということでしょうか。
94年は、Yahoo!誕生とWebCrawlerが稼働開始。NIFTY-Serveがインターネットとの接続サービスを開始して、telnetが接続できるようになり、ダイヤルアップも始まったと。
増井:amazon.comも創業してる!この時にネット通販やろうとするなんてすごいなあ。
白石:94年12月にNetscape(Netscape Navigator)も公開してますね。10月にW3C設立かあ。
増井:Netscapeもこの頃はまだCD-ROMで配布してましたね。ソフトウェアも有償で販売してた。ところで、初めにWeb向けに書いたCGIって何ですか?
あんどう:適当にカウンターとか掲示板のCGI拾ってました。
白石:羽田野太巳さんもfutomi’s CGI CafeでPerlのスクリプトCGI紹介してましたね。CGIとかPerlっていつ誕生したんでしたっけ。
古籏:Perlは80年代ですよ。
増井:僕はPHP/FIで97年くらいから使ってました。ちょうどその頃に日本語パッチが出た頃です。
白石:95年にamazon.comがサービス開始。Internet Explorer(IE)より前にサービス開始しているんですね。
増井:この頃からIPv6(※)の規格策定がうんぬんとか、議論してたんだなあ。
※IPv6:IPアドレス枯渇対策として登場したInternet Protocolの一種
古籏:たしかIEはそれまで違う名前だったはず。Spyglassだったかな。
増井:ああ、たしか買収したんですよね。Mosaicをもとに開発されたんだけど、Microsoftが買収してレンタリングエンジンだけ書き直したっていう。やばい、このままだと90年代前半だけで座談会終わっちゃう。
白石:ですね(笑)。じゃあ、96年!うわーICQ(※)だって。懐かしい。
※ICQ:Windowsベースのインスタントメッセンジャー:I seek you
増井:僕、OCNのエコノミーに月2~3万円払って入ってました。この頃はみんなテレホーダイ使ってて、夜23時くらいからWebの世界が始まってた。僕は学生だったんですけど、ネットが遅いのが嫌で、専用線引いてました。
【90年代】黒歴史ありますか?
白石:まだ全然テックな話が出てないですが、97年にはGoogle検索が登場してますね。
増井:僕の黒歴史なので出したくなかったんですけど、90年代後半くらいに作ってた僕のHPがまだWebアーカイブスに残ってるので、ちょっとだけお見せします。大学の研究室のページで、昔から技術の話はここで書いてて、メーリングリストとかチャットルームとかも作ってました。
自分でチャットスクリプトを作って、人ごとに色を変えられたりとか、かなり凝ったCGIをPealで書いてたんですよね。IE3とNetscapeで動きますって、ただし書きも書いてます。ゲストブックも自分で作ってました。ちなみにこの頃、まだ本名でやってました(笑)。
音楽関係のファンページも作ってたんで、いろんな人と仲良くなりました。いまだに付き合いがある人もいます。自分でWebサーバーも作ってたなあ。
97年からはPHPを使ってて、CGI関連のアルバイトもしてました。CGIのカスタマイズをしてほしいというかんじの。
白石:あんどうさんと古籏さんは、黒歴史ありますか?
あんどう:僕が昔作ったマインスイーパーは探したけど、もう見つからなかったです。
古籏:僕はWebアーカイブスじゃなくて、ほぼ全部残してある。作ったものを全部残すという方針なので、30年くらい前に作ったゲームのコードとかも残ってます。PDFにして売ってるのもあります。バイナリ込でね。
あんどう:そのソースコードを見て、みんなキーボード打つってかんじなんですかね。
古籏:いや、自分が作ったもののソースコードをPDFにしてました。手書きです。昔は紙に書いてから、それを入れてたので。
白石:98年はGoogle法人化、ICANN (The Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)が設立。99年はMelissaウイルス流行、Napsterがサービスインしてますね。2ちゃんねる開設も99年。思ったよりも最近に出たサイトなんですね。
【90年代】Java Applet、Flash…懐かしの技術キーワード
増井:90年代後半の技術キーワードで忘れちゃいけないのが、Java Applet(※)とかFlash、DynamicHTMLですよね。Directorとかもありました。
※Java Applet:Webブラウザに読み込で実行するJavaのアプリケーションの一形態
白石:Directorって何ですか?ShockwaveやFlashと何が違うんでしょう。
増井:Directorはマルチメディアで、ShockwaveはFlashとDirectorの再生用プレイヤーです。この中でもFlashは結構長生きしていますよね。
白石:90年代の技術トピックで一番ホットだったのって、第一次ブラウザ戦争だったと思うんですけど。実際どんな雰囲気だったんですか?
増井:コードを書いている身からすると、互換性が低かった。このタグはIEでしか表示されないとか、プロパティでタグを指定するとどっちかではなぜか文字化けするとかよくあった。Compatible出してるところも多かった。
白石:昔はよくHPに「このサイトはInternet Explorer *.*以上で見てください」とかって書かれてましたね。そういえば、Mozillaっていう名前が使われ出したのっていつくらいですか?
増井:Netscapeが最初ですね。NetscapeのコードネームがMozillaだったと思います。
古籏:たしか最初はMosaicscapeにしようとしたら、登録商標でダメでNetscapeになったんですよ。
白石:で、Netscapeが勢いを伸ばしていたら、Microsoftが対策を講じてきて、97年くらいからブラウザ戦争になるわけですね。
古籏さんは、懐かしい技術にIE3.0を挙げてましたけど、何か思い入れがあるんですか?
古籏:思い入れというか、IE3.0だけJavaScriptでローカル変数とグローバル変数のvar定義が逆だったんですよ。当時Netscapeで動いてたグローバル変数が動かないので、調べてみたら扱いが逆だったことがわかって。解決策としては、全部グローバル変数で書けば動くと。
増井:それ、最悪だー(笑)。
古籏:もっと最悪だったのは、数カ月後にIEがバージョンアップされてNetscapeに合わせたから、直っちゃったことなんですよ。
白石:古籏さんは今回あだ名を老害王にしてましたけど、そういうときに全部グローバル変数で書いたことで、コードをたたかれたからですか?
古籏:そうねえ。一番最初にJavaScriptの本を書いたときに、感想のメールが来たんですよ。いいことが書いてあるのかなって期待して開けたら「あなた方の本は買いません」っていうメッセージだったんです。老害っていうか、最初からダメだった(笑)。
白石:なるほど(笑)。あと、Server Side Includeって何でしたっけ?聞いたことはあるんだけど…。
古籏:サーバーが重くなっちゃうから今はあんまり使われないんだけど、まだ使ってるサーバーもありますよ。ページが変わってもヘッダーとフッターを同じデザインで表示させたいときなどに、1995年頃はよく使われてました。
増井:1枚ファイルを書きかえれば全ページに対応できるので便利でしたけど、今はPHPとかで作ることが多いですね。計算機能がないPHPみたいなかんじで、インクルードだけできる。今から思えば、セキュリティ概念がほとんどなかった。
白石:CSSの話もはずせないですね。CSSっていつくらいからできたんでしたっけ。
古籏:IE3.0からです。IE3.0の頃は、文字の色や背景、サイズくらいしか指定ができなかったはずです。IE4になって劇的に進化したんですよ。
増井:Netscapeとのタグの互換性がひどくて、結構アトリビュートで埋め込んでましたよね。今ならググれば出てくるからわかるけど、当時は直し方がわかんないんですよね。この頃は紙の本を買って読んでました。
白石:古籏さんはそういう本を書いてたと。
古籏:いかにバグを回避して動かすかって世界だった…(苦笑)。
増井:90年代は全部がWebになった時代でした。それまではGopherやメーリングリストとか、いろんなメディアがあったのに、全部Webに集約された。僕もRubyのメーリングリストにとんちんかんな質問をしたのがアーカイブに残ってますね。メーリングリストに質問を投げたことがきっかけで、堀江さんに誘われてオン・ザ・エッジにバイトにも行きました。
あと90年代の話題だと、htttpサーバーはApacheじゃなかったよねとか、検索エンジンは90年後半に出てくるロボット型のGoogleが登場するまで、Yahoo!とかのディレクトリエンジンの検索サイトがたくさんあったことですかね。紙のインターネット電話帳とかもあって、本屋さんで売ってました。
──会場から千里眼やODiNが懐かしいという声が上がる
白石:千里眼とかオーディエンって何の話?
増井:検索サイトです。当時Googleみたいに、大学の研究室で検索サイトを研究して試みたところがあったんですよ。千里眼が早稲田で、ODiNが東大かな。だけど、誰もビジネスの方向には向かわなかったんです。
【2000年代】Webの歴史を振り返る
増井:2000年問題って、ありましたね。僕は徹夜したけど、結局何も起こらなかったので、会社の皆で鍋食べましたけど(笑)。
白石:Wikipediaが2001年に始動していますね。
増井:この頃がCGMというか、ユーザー・ジェネレイテッド・コンテンツ(UGC)の大きな始まりでしたね。日本でWikiが流行ったのも2001年後半くらいでした。僕がPukiWiki始めたのは2002年の頭からでした。PukiWiki自体は2001年からでしたけど。
あんどう:2004年くらいがSNSの始まりでしたね。
白石:mixiとFacebookが同じ2004年なんですね。Firefox 1.0も2004年、YouTube設立は2005年かあ。現代感出てきましたね。
増井:ここまでくると最近ですよね。昨日と区別がつかない(笑)。この頃に出た「ウェブ進化論」という本で一般の人が一般認知するんですよね。ほかの業界の人がこれで知りましたからね。
あんどう:この頃テレビCMで「続きはWebで」っていうのも出てきましたよね。僕、結構感動してました(笑)。
白石:2000年頃は何をしていましたか?
あんどう:つらい仕事をしてました。
増井:ドコモのiモード公式ページを作ってました。iモードのメールがSMTPの規定に微妙に沿って結構苦労してました。@の前に.をつけられると届かないのに、その辺対応してくれなくて。この頃に写メとか、Yahoo!BBとかも出てきましたね。
あんどう:ブロードバンド時代ってやつですね。
増井:普通の人が圧倒的に使うようになってきた。出会い系サイトも流行った(笑)。
白石:Web2.0はウェブ進化論のあたりからでしたっけ。
増井:一般の人もそんな話をするようになったのは、完全にウェブ進化論からですね。新しいものができたというよりは、その時代にインターネットにつながるようになったので、Webの人口が圧倒的に増えましたよね、この時期に。
白石:この時期にみんな集合知っていうキーワードを口にしてましたよね。あとAjaxもそうだし。
増井:オープンソースという概念も一般の人に認知されるようになって、どうしてソフトが無料で使えるのかってよく聞かれました。伽藍とバザール(※)というドキュメントを読んでオープンソースってこういうにやればいいんだって理解して、それでPukiWikiをはじめたんですよ。
だからPukiWikiはちゃんとあれに乗っとってました。自分が最初に作ったものではなく、他の人が作ってるけど、作る人がいなくなったのをちゃんと探して譲り受けた。パッチを送って、チームを作って、ネットの中だけで完結させるということにこだわって作った。それなりにうまくいきましたけど、死ぬほど苦労しました。ドメインなくして、罵詈雑言だったこともありましたね(苦笑)。
※伽藍とバザール:Eric S. Raymondによって書かれたオープンソースに関するドキュメント
95年からGoogle Wave終了までを総括
白石:最後に、皆さんからまとめのコメントをお願いします。95~99年は古籏さん、2000年前後は増井さん、2003年くらいからGoogle Waveまではあんどうさんで。
古籏:95~99年は混沌として、大変面白かった時期でした。いろんなものができたし、いろんな人にチャンスもあった。発明品だったのは、Netscapeですよ。Mac,Windows,UNIXでバラバラだった改行コードや文字コードを気にせずに使えるようになり、コミックマーケット等でのマニュアルなどがHTMLに統一されて凄く便利になった。
白石:IEが出てきて、ブラウザ戦争も終わっちゃったんですよね。
古籏:NetscapeがOSを乗っ取るんじゃないかという危機感があって、Windows98はIEを組み込んだんですよね。それでIEが勢力を増して、98年にはブラウザ戦争は事実上半分くらい終わって、99年にはだいたい終わってた。それからGoogle Chromeが出てくるまで、IEの天下でした。
増井:2000年くらいからは、ブラウザの世界がモバイルに圧倒的に移ってきた時期でした。PDAやガラケーのiモードとかで、普通の人が乗り換え案内や検索を使うようになった。
2000年前半にWebの基礎的なものができてましたね。このあとはブラッシュアップが続くかんじになってるし、このあたりで参入した人や企業はだいたい残ってる。ただ、この辺から何をするにもコストがかかるようになった。趣味の世界だけではやれなくなって、個人よりも企業のほうが強くなってきましね。
あんどう:2003年くらいは、マッシュアップが流行ってた頃。何のビジネスにつながるかわかんないけど、みんなXMLでWebAPIを公開してましたね。企業が作れないものを個人と協力して作ったり、あの時代はあの時代でよかった。Googleが謎のAPIをどんどん出して面白かったし。そんな時代も、Google Wave終了とともに終わりました、と。
増井:マッシュアップは面白かったけど、その後商用やモノになったサービスってあんまり聞かないですよね。
白石:今の話は時代を象徴していて面白いですね。Google Wave終了で、みんなの夢も一旦落ち着いてきたかんじだった。Googleガジェットとか、Google Waveは終わっちゃったけど、Googleの技術の集大成でしたよね。
あんどう:終了したけど、技術的にはGoogle docsに集約されていますよ。
白石:最後は時間がなくて、かけ足になっちゃっいましたね。今度はSNS編とかCGI編とかPHP編とか、もっとテーマを絞って第二弾をやりましょう!
ということで、第二弾の開催をお楽しみに~!