【UIデザイナー不要説は本当か】現役クリエイターが「UI Crunch」で語った本音とは?

DeNAとGoodpatchの現役クリエイターが中心となって立ち上げられた、UIデザインを追求していくコミュニティ「UI Crunch」。11月27日に開催された第2回目の勉強会のテーマは「UIデザイナー不要説について語る」。

サービスやプロダクトを作る上で大きな差別化要因となっているUIデザイン。とはいえUIデザインに携わるUIデザイナーが、業界や企業において高い評価を受けているわけではない。そんな状況にもやもやした状況からネット上では「UIデザイナー不要論」まで飛び出すことに。「UI Crunch #2」はそのホットな話題「UIデザイナー不要説」について、徹底討論が繰り広げられた。

「UIデザイナー不要説」を書いた真意

最初のスピーカーとして登壇したのは、今回のイベントテーマとなった「UIデザイナー不要説」というブログを書いたTaiki Kawakamiさん。スピーチタイトルは「UIデザイン最終防衛マニュアル」。KawakamiさんはWebサービスUI設計やフロントエンド実装を行っているデザイナー。また個人でもTwitterクライアント「YORUFUKUROU(夜フクロウ)」のUIデザインを作ったり、Λ Structure Designというブランドを立ち上げたりしている。


 ▲Taiki Kawakami(@seabream)さん

そんな中、UIデザインについてもやもやしている気持ちから「UIデザイナー不要説」という記事を書いたところ、業界に「波紋を起こした」と語る。「UIデザインが不要だとは思っていない。しかし企業としては投資しても短期的に大きなリターンが得られるものではない。だから投資されづらいという趣旨の記事だ」とKawakamiさんは極端な例を挙げて説明を続けた。

あるWebサービスにおいて、これまでの経験から1カ月で10個の新機能をリリースすれば5000万円の売上が上がると見込まれるとしよう。1カ月に10個リリースするには最低限のデザイン。しかしデザインに時間をかけると5個しかリリースできない。

その場合、経営者はどっちを選ぶかというと前者となる。そんな状況の中で、デザイナーは後者の方が、価値があるんだよとどうやって説得すればよいのか。このような状況からすぐ脱却できる方法について、Kawakamiさんが示したのは4つ。

1.革命:何らかの方法で社内にUIデザインの必要性を認知させる

例えば、簡単に作れるプロトタイピングを提出して議論をしたり、自主的にUIデザインが優れたものを作ったりして、数値測定をしてみるのも一つの手だ。ただ数値測定については「UIデザインを変更すると、これまでのユーザーの慣れにより数値が一時的に落ちることがあるので諸刃の剣になることも」とKawakamiさん。それでもダメなら上司、上層部に掛け合うことだ。

2.転職:よりUIデザインを重視している企業へ転職する

自分がこのプロダクトがいいなと思っている企業など、優れたアウトプットができている企業かどうかで判断するのである。もし分からない場合は、転職エージェントに相談するのも一つの手だ。

3. 独立:起業するかフリーランスになる

自由になるが、何もかも自分で考える必要があり、毎月固定の給料が入るわけではないので、生活が苦しくなることもある。

4. 趣味:仕事ではなく趣味でUIデザインを重視したものを作る

「僕の場合はこれ」とKawakamiさん。今日のスピーチも趣味で引き受けたのだそう。趣味なら自分でやりたいことを単純に追求できるし、アウトプットしていると「いろいろお願いされるので副業になることがある」のだという。あまり大きなことはできないが、1から3番と両立することができるので、「今いる環境に不満のある人は試してみるといいのでは」とアドバイス。

長期的な解決方法としては、「UIデザインの重要性を啓蒙していくことだ」と言う。そのためには「エンジニアがコードをどんどん公開して議論しているように、デザイナーもUIに隠されたデザインコードを公開し、どうしてそういうUIを作ったのか意図も含めて議論していくことだ」と語る。

いろいろ議論することは、自らの成長にもつながる上、会社の広報にもなるとも言う。もちろんコンプライアンスなどもあるが、公開することで、非デザイナーもUIデザインへの理解が高まっていく。Kawakamiさんは最後に「UIデザイナー不要説なんて見向きもされない世の中を目指しましょう」と締めくくった。

丸裸になって自分がやりたいUIデザイナーを考える

続いて登壇したのは、nanapi CCO デザイナーの上谷真之さん。スピーチタイトルは「風呂場で考えるUIデザインの未来」。


 ▲株式会社nanapi CCO デザイナー 上谷真之さん

UIデザイナー不要説について語ると、どうしてもUIデザイナーの市場価値や求められるスキル、さらにはUIを生み出す価値などが話題となるが、これらは組織や業界のトップダウン的な考え方。

またUIデザイナーと一口に言っても、所属している企業やその人が描いているキャリアイメージによってそれぞれ異なる。統一的な指標やフレームに当てはめて議論にすると大抵は不毛に終わる。そこでここでは既存の考え方から解き放って考えたい」と上谷さんは言う。それが「風呂場で考える」ことなのだ。

風呂に入るときは、みんな裸になる。つまり既存の考え方(衣服)を脱いで、ゼロベースで話し合い、キャリアについて俯瞰していこうというのである。「思考のリフレーミング。枠組みを外して考える」を行うというわけだ。

思考のリフレーミングは「こわす」「ならべる」「もどす」の3つを行って整理することで可能になる。

1. こわす

今置かれている組織や肩書きを外すのである。例えば上谷さんもnanapiや職種などすべてを外してしまえば、33歳の単なる独身男性という状態になる。

2. ならべる

壊した状態、フレームを外れた状態で自分のキャリアについて見直してみるのである。上谷さんの場合は、UI設計、ユーザーリサーチ、組織作り、情報設計、サービス改善、企画などのスキルを並べ、さらに「心に届くデザインで世界を変えたい」という自分のビジョンやライフテーマも挙げた。

3. もどす

自分の目指すキャリアややりたいことを社会や組織に戻してみるのである。自分を起点にして社会や組織にこんなキャリア、こんな価値を届けていきたい、それができるよう組織、社会にアジャストさせていくことを考えるのである。こういう手法を使い、UIデザイナーとはどういう仕事なんだろうということが、整理できる。

「業界や社会が求めるUIデザイナーを気にしすぎるのは時間がもったいない。誰かに合わせて決めるのではなくて、自分がやりたいように決めるのが重要だ」と上谷さんは強調する。

* 誰かが決めたUIデザイナーという肩書きはいらない
* 自分がやりたいことをやろう

「デザインを楽しんですばらしいサービスを作ってほしい」と語り、スピーチは終了した。

B2Bアプリ・サービスにおけるUIデザインの価値とは

3番目に登壇したのは、トレタ COOの吉田健吾さん。スピーチタイトルは「UIデザインの価値」。


 ▲株式会社トレタ COO 吉田健吾さん

吉田さんは自身のブログ「Parallelminds」にKawakamiさんの「UIデザイナー不要説」のアンサー記事「UIデザインの価値」を書いた一人。この業界に所属して13~14年。2014年7月より「トレタ」という飲食店向けの予約台帳サービスを提供している会社で、COOを務めている。

「UIデザインに価値はないのかと問われたとしても、もちろんあると答えるしかない」と吉田さんは言い切る。その理由は、「ユーザーが触れるところはUIであり、そこが良くなければ優れたビジネスモデルも高い技術力も評価されないと思う」からだ。UIはユーザーのアプリに対する印象に加え操作感も決定づける重要な要素である。従って「UIデザインは競争力の源泉になると考えている」というのだ。

「ただUIデザインよりも他の要素が優先されるケースはある」と指摘する。その一つは価格訴求力が強い場合。またポイントが付くなど、デザイン以外の何か強力の魅力がある場合。さらにB2Bアプリで多いのが、デザインの善し悪しで利用可否が決まらない場合。「自分の例で言うと会社で使っている勤怠申請のサービスは使いにくいが、決められているので使うしかないというようなことがそれだ」と吉田さん。

つまりUIデザインは数ある要素の一つである。ビジネスの結果を出すために万能ではないが重要なもの。先述したように、特にデザインの善し悪しで利用可否が決まらないケースが多いのが、B2Bアプリ・サービスである。そこでB2BのおけるUIデザインの価値とは何か。

トレタが提供している飲食店向け予約台帳サービスは、仕事のために使うアプリである。飲食店は非常に忙しい。操作に迷ったり、ミスを誘発したりするようなUIは大きなコストにつながる。

そのため、「B2Bの現場でのUIの価値は大きく説明しやすい」と吉田さんは言う。とはいえ、「1年も使っていれば慣れる」というセリフがまかり通るのもB2Bの世界ならでは。特に稟議を回すときは「高機能、多機能、低価格」なものほど通りやすい。

つまりUIが優れていることの価値について、稟議を通すのは容易ではないのだ。そこで「シンプルで簡単であることがどれだけ重要かを伝えるようにしている。UIデザインにちゃんと価値があることを伝えている」と語る。

同じようなB2Bアプリが登場している中で、一番差別化できるポイントがUIデザインなのだ。最後に「UIデザインを競争力としてその価値を証明していきたい」と語り、スピーチを締めくくった。

過去を振り返りUIデザイナーの必要性を考える

ラストに登壇したのはBASEのCTOである藤川真一(えふしん)さん。スピーチタイトルは「経験に基づくUIデザイナーの必要性」。


 ▲BASE株式会社 取締役CTO 藤川真一(えふしん)さん

製造業の技術者としてキャリアを積んできたえふしんさんは、2000年にネット業界に転身。2004年頃に在籍していた会社では、UIデザイナーという職種がなかったという。「その頃の話をしたい」と語る。当時のWebの制作はどんな状況だったのか。

1. 営業部門でWebの重要な仕様が決まっていた

2. もう言っちゃったから、今さらやめられない。どうにか実現せねば。

3. 案の定、制作部門が不満たらたら

(営業やディレクターが起こした簡単なパワポを下にデザインを起こしていくので、不備が出てくる)

4. 制作部門は納得いかないので、自分たちのコストで作り直してしまう

(アーキテクチャ不在。作った階段を自ら壊す)

5. 開発チームがとばっちりを受ける

そのときに思ったのが、「Webの設計は誰がやるの」ということだったという。えふしんさんは当時書いたブログを披露してスピーチを続けた。

Webを設計する人は技術者でもないしビジュアルデザイナーでもない。その中間の人だ。いずれデザイナー的な側面の人か技術者的側面のいずれかの人が傾倒し、そういう職種の人が登場してくるだろうということを予言していたという。

だが、業界はそうではなかった。だからこそ当時のえふしんさんは「設計の重要性がそこまで認知されておらず、誰もWebサイトの実現性に責任を持てない状況であること」「スキルセットが不足しており、とりあえずデザイナーやディレクターにアサインされてしまう状況を問題視していたのだ。

そして今もこのような状況があるという。当時から役割として必要だなと思っていたのは、情報の設計=Web UIデザインに責任を持つ人、プリセールスとポストセールスに関わる人(受託の場合)、そしてチームの一員としてWebサイトが目標とするフィロソフィーを円滑に実現する役割を担う人(楽しさ=UX、ユーザビリティ、実用性)である。

しかし「そんな人材いないよね」という説が登場する。もちろん「すべてができる人材を求めているわけではない」し、「チームとして補えればいい」というのだ。またこういう役割が「職業分野としてFIXしているとは思っていない」とも言う。

「お母さんでも使えるネットショップ」+「モノを売るたのしさ」が味わえるサービスを提供しているBASEではどういう人を求めているのか。成果の原資として必須なのが、ビジュアルデザインのスキルである。次に論理的思考。つまり物事を順序立てて考えられ、ちゃんと説明できること。第三にネットがすごく詳しい人もしくはすごく興味がある人だ。

「UIのスキルはぼくたちがカバーできる」えふしんさん。BASEというサービスがチャレンジなので、ジョインする方にも会社と自分を成長させていく人がくればいいというのだ。その中で「UIデザイナーは不要なのか。その存在意義をついて改めて考えていきたい」こう語り、スピーチを終えた。

「UIデザイナー不要説」をテーマに語り合う

10分間の休憩を挟み、UIデザイナー不要説について語り合うパネルディスカッションが始まった。パネラーはゲストスピーカーとして登壇した4人にDeNAのUI Designerの坪田朋さんの5人。そしてGoodpatch CEOの土屋尚史さんがモデレータを務めた。


 ▲左から、DeNA デザイン戦略室室長 UI/UXデザイナー坪田朋さん、株式会社グッドパッチ 代表取締役 土屋尚史さん

土屋:なぜ「UIデザイナー不要説」という記事を書こう思ったのでしょう。UIデザイナーが不要だと思ってないですよね。

Kawakami:不要と書くと逆に必要だという議論ができると思ったんです。

土屋:そしてKawakamiさんのブログを見て書いたのはアンサー記事を吉田さんが書いた。

吉田:タイトルを読んだ感想となんかイメージが違ったんです。

土屋:その頭の整理のために、えふしんさんが記事を書いた。

えふしん:けんごっち(吉田さん)が書いた記事を読んで、そういうことあるよね、と思いつつ、UIデザイナーや開発者を募集しているので、そこで思っているとことを書いたんです。そもそも、当社でも募集するときに職種名の出し方をどうするか、WebデザイナーかUIデザイナー、フロントデザイナーなのか工夫していたんです。でもなんかはまらないなと思っていたときに、そういう記事が上がったんです。



土屋:みなさんの会社にUIデザイナーと呼ばれる方は何人いますか?DeNaの坪田さん。

坪田:クリエイターは200人ぐらいいますが、UIデザイナーと呼んでいる人は20~30人です。当社のUIデザイナーのミッションはUIの設計はもちろん、プロトタイプまでも回す人。ディレクターとグラフィッカーとタッグを組み、UIデザインを開発していきます。

上谷:うちはUIデザイナーがゼロです。単にデザイナーはデザイナーと呼んでいる。うちのエンジニアはプロトタイピングまでを作るので、UIという言葉をあまり意識していないのかもしれません。デザイナーは僕を含めて6人。

デザイナーの仕事はかなり広くてビジュアルデザインはもちろん、マークアップ、UIの設計、情報設計、数字にもかなりコミットする。もちろん、一人で全てに責任を持つのではなく、特異な分野アサインしています。

土屋:Kawakamiさんの会社は、UIデザイナーは何人いますか?

Kawakami:10人ぐらいですね。デザイナー全体だと50人くらいいます。

土屋:その中でKawakamiさんはUIデザイナー。デザイナーになったのは?

Kawakami:2013年です。もともとは別の会社でWebデザイナーとして経験を積み、今の会社でUIエンジニアを経てUIデザイナーになりました。社内で必要だと言う風潮が高まったことがきっかけです。

吉田:トレタは20人ぐらいの会社ですが、デザイナーは一人。その彼はUIデザイナーだけをやっている。いわゆるWebデザインは外注にお願いしています。アプリを担当しているデザイナーしかいません。

えふしん:BASEはデザインを担当しているのは3人です。そのうちUIデザインを設計するのは1人です(2014年12月からは2人)。人それぞれ得意分野が違うので、パーソナリティに応じてお願いしている。いちばん広い職域の人はデザイン、UI設計、マークアップ、さらにはPHPのテンプレートまでいじってもらっています。

土屋:うちはデザインの会社なので、UIデザイナーは12~3人います。元々はWebデザイナーとグラフィックデザイナーだった人たちが、現在、UIデザイナーとして活躍しています。

UIデザイナーが持つ権限について


土屋:プロジェクトの中でUIデザイナーはどのくらいの決定権を持っているのでしょうか。

坪田:プロダクトの最終の意思決定権はプロデューサーが持つべきだけど、サービスを作る人、つまりUIデザイナーがハンドリングやコントロールの意思決定権を持つべきだと思います。

土屋:UIデザイナーが最終の意思決定権を持つ人になってはいけないんですか?

坪田:僕は昔サービスを造ったときにプロダクトオーナーとしてUI設計をしたこともあるので、ケースによってはあってもいいかなと思う。僕はある程度の意思決定権がないとサービスを作りたくありませんね。



土屋:nanapiはどうですか?

上谷:うちはデザイナーの意思決定権は一般的には強いと思っている。最近、新規開発を行っているチームはデザイナーとエンジニアのみで構成されており、KPIも全員が持っている。そんなプロデューサー、ディレクターはいないチームが何チームもあります。KPIを達成するための施策は承認がいらないんですよ。

土屋:承認がいらないんですか? デザイナーがこうしますと言ったことが実装されるということですか。

上谷:新規開発はスピードが優先されるので、意思決定で遅くならないように権限を移譲しているんです。

土屋:Kawakamiさんの会社ではデザイナーはどんな立ち位置ですか。

Kawakami:非常に権力が弱い状態です。だから不要説を書いたということもある。本当に自分必要なのと感じるぐらい低い。



土屋:もう少し具体的に話してくれますか。

Kawakami:元々、デザイナーがUIを考えるという工程がないんです。ディレクターのつくったそれほど凝っていないパワポから画像を作り、それをエンジニアがそれを組み込むという感じです。ただ、最近は徐々に改善してきており、僕自身がワイヤーフレームを書いたりするようになりました。

吉田:うちは権力というか権限ということで言うと、代表の中村がプロダクトオーナーを兼務しているので、最終的な意思決定は全部彼が担います。中村は飲食店の現場にいた経験があるので、彼以上にユーザーに近い人材はいないんです。

土屋:BASEはどうですか?

えふしん:うちも代表の鶴岡がクリエイティブディレクターという立ち位置なので、最終の意思決定権は彼が担っています。ただ、当社では機能マターではなくデザインマターで開発するように言われています。つまり使いやすさ、楽しさが先になかったら、機能を追加しても仕方ないという考え方があるんです。

土屋:まさにデザインドリブンですね

えふしん:そうです。

UIデザイナーとして求められる人材とは?


土屋:デザイナーの募集条件について教えてください。

坪田:すごくグラフィック勉強してきましたとかデッサン力ありますと言うより、作ったものをきちんと自分たちで自己否定して、何がユーザーに刺さるのかという思考を巡らすことができる人ですね。

今は2Dだけでなく、アプリケーションの開発はアニメーションやレイヤー、トランジションなども含めて、機能としてデザインしていくことが求められます。それらを頭の中でシミュレーションしてUI設計できる人ですね。総括するとユーザーが本当に使うかどうか、機能を選別してディレクションできる人です。

土屋:そんな人はいません(笑)。

坪田:全てできる必要はないんです。足りないことはコミュニケーションできて、ユーザーを意識しながら頑張る人。楽しみながらプロトタイプを回せる人です。えふしんさんとも話していたけど、UIデザイナーはスタートアップ時のCTOと似ていると思うんです。名称は魅力的だけど、やることは何でも屋さん。

上谷:うちはUIデザイナーではなく、デザイナーを募集しています。重視しているのは情熱と視座の高さ。この2つがあればスキルは付いてくると考えているからです。



吉田:同じような答えだが素養や姿勢が大事だと思っている。デザインに対して、代表の中村が全身全霊をかけて聞いてきます。そのときに、なぜこういう風にしたかを自分の中でロジックを立ててちゃんと説明できることが大事になるからです。

えふしん:UIの担当で言うと、普通に採用するときはいいビジュアルデザインができるかどうかを見ます。Webもアプリもぱっとみて使えなければ、その後ろにどんな高機能があっても使えないからです。かっこいいデザイン、魅力的なデザインがあって、その後ろに使い勝手があると考えています。

だからビジュアルデザインを見るんです。次に重視するのは論理的思考です。物事を順序立てて説明できる、ユーザーにとってどうハッピーかを議論できること。そういうデザイナーであれば育成できます。あとは度胸のある人ですね。スキルはできなくても立ち向かう勇気が必要だからです。

土屋:と企業は言っていますが、Kawakamiさん、いかがでしょう。

Kawakami:そんなに募集しているんですね。デザイナーの需要があるということは、もっと発信していってほしいと思います。

土屋:Kawakamiさん周りにいるデザイナーさんたちは、どういうところで働きたいと思っているのでしょうか。

Kawakami:それなりの権限が与えられており、意思決定に携われて、給与も平均以上ぐらいもらえる会社ですね。

デザイナーの給料は上がるのか?


土屋:以前、Webデザイナーの給与が非常に安いという議論がありました。デザイナーの給与はどうやったら上げられるんでしょう。

えふしん:マネジャーになれば上がります(笑)。というのはさておき、成果物の評価が難しいんですよね。

土屋:デザインは定量的(数字に換算できない)な評価ができないことが多い。これをやったら売上がこれだけ上がるという証拠が提示できませんからね。こう点が、デザイナーが冷遇される要因になっていると思うんです。



吉田:ぼくはもっと単純に考えていて、需給関係の問題だと思います。UIデザイナーが採れないというのであれば、UIデザイナーの給与は高く出さないと来ないと言うこと。Webデザイナーは供給が多いか、できる人、できない人の判別ができていないからではないでしょうか。

社内の対策としてはえふしんさんがおっしゃったように、上級職を作っていくということもありますが、評価軸もデザイナーたちで作っていくという動きがあればよいのかなと思っています。前職(ペパボ)にいたときに、エンジニアが上級職制度を作ったんですよ。みんないろんなアウトプットしてもらって、業界的に上がっていくのでは。

えふしん:Goodpatchさんが単価を上げて公開すると、「デザインってこんなにコストがかかるんだよ」というというのがわかるようになるのでは(笑)。業界としてこれぐらいのクオリティを保つにはこれぐらいかかるよというのを示してください。

土屋:今、それをやろうと思っているんですよ。そしてデザイナーの評価制度も今、作っています。デザインの単価はこの1年半で人月単価が倍になっているんです。

坪田:デザインの受託会社は、グラフィックのみ納品しており、プロセスは納品していないんです。グラフィックだと人月単価でそこそこの単価で出せるし、相見積もりをとると他の会社が安く出すと平均値を取られてしまう。デザイナーも強気に言っていった方がいい。

土屋:ソーシャルゲームが流行ったことで、それに携わるエンジニアの給与はかなり上がりましたからね。今はデザイナーでも同じことが起きようとしているということですね。

坪田:あと1年ぐらいしたら、デザイナーにオファーレターがたくさん届く時代がくるのではないでしょうか。そのときに大事になるのは自分のプレゼン力。海外のデザイナーは自分のプレゼンがうまいんですよね。自分はこれだけ高い価値を持っているしポートフォリオを持っているからちゃんと高く評価してくれないと仕事をしないというスタンスなんです。

土屋:低い給料で働いてしまっているデザイナーさん達にも問題があるということですね。

Kawakami:今日は本当に勉強になります。

稼げるデザイナーになるために


土屋:稼げるデザイナーになるためにはどうすればよいでしょう。

Kawakami:ぼくは稼げていないので、教えてほしいですね。

坪田:オリジナルのUIデザインをなぜこのUIにしたのかという理由とともに、毎月、BehanceやDribbbleに上げていくんです。おそらく1年以内に200万ぐらい給料を上げられるオファーが来ると思います。自分で発信してプレゼンして目立つ人は、企業からオファーが来るんです。だまされたと思って、半年やってみてください。よければぼくがスカウトしますので。



土屋:日本では自分でデザインを作っても公開できないみたいな風潮があります。坪田さんは会社のデザイナーでも全部、公開しようとしているんですね。

坪田:自分でつくったものは言いたいじゃないですか。言えない環境は不健全だと思うんです。そこで当社では仕事で作ったものをBehanceやDribbbleなどで発信していこうという文化に変えました。企業努力すれば変えられます。それが優秀な人材を確保することに、そして企業の存続にもつながるからです。

吉田:オープンソース活動と同じです。有名になった人に仕事以外にも話がくる。これはみんなが努力をすれば登れる山です。エンジニアはソースコードを公開することができるが、デザイナーは最終のアウトプットだけ出してもダメなので、意図なども出していくとこの人はちゃんと話が通じるデザイナーだと見えるようになりますよね。

土屋:Kawakamiさん、個人でも仕事を受けていますよね。個人だとある程度、単価を上げて出しますか。

Kawakami:出しますけど、値切られることが多い。

土屋:負けちゃダメですよ。こんなに価値を出すのでといって、言い切れるのが重要だと思います。

デザイナーはプロダクトをリードできる立場になれるのか


土屋:デザイナーがプロダクトをリードできる立場になれる時代が来るのでしょうか。

坪田:その人次第ですが、そういう環境はすでにできています。

えふしん:スマートフォンのアプリはデザイナーがリードしないと作れませんしね。

土屋:とにかくこれから1~2年、UIデザイナーはスター状態だと思います。

坪田:もし今の環境がデザイナーの価値を感じてくれていないのであれば、別の価値を感じてくれる場所に行くべきだと思います。

会場からの質問はもちろん、スクーでの受講者の質問にも答え、盛り上がったまま終了時間を迎えた「UI Crunch #2」。UIデザイナーは不要どころか、今後ますます求められる存在となることがわかった。ビジュアルデザインが得意なら、開発側からも転身ができる。これからの注目の職種と言えるのではないだろうか。

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