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No.3 吉川徹: 新たなエキスパートを生み出すために ── HTML5の普及促進、Chromeの情報発信に全身全霊を注ぐ

HTML5 Experts.jpのエキスパートって、どんな人たち?エキスパートたちのキャリアや得意な技術分野、いま最も興味があることなど、インタビュー形式で紹介していきます。第一回は吉川徹さんからスタート。聞き手はもちろん白石編集長!

SIerの仕事からフリーランスへ。その転機とは

──まずは、現在の活動とこれまでの経歴について聞かせてください。

エキスパートNO.3 吉川徹さん

私は現在、フリーランスとしてWebまわりの仕事をしています。白石さんと一緒に「html5j」などのコミュニティ活動をしたり、NTTコミュニケーションズでこの「HTML5 Experts.jp」のような面白いことをやったり(笑)。また私は、Google社にChromeのDeveloper Expertとして認定されていますが、HTML5とChromeはかなり密接な関係でつながっているので、HTML5の情報もいろいろと発信していますね。

2011年にフリーランスになった後は、受託の仕事を主にしていたのですが、その時にjQuery Mobileの本を書くお話を頂きました。しかし、この執筆がなかなか進まなくて(笑)。かなり長時間をかけて書きました。やはり受託の仕事をしていると、どうしてもそちらの仕事のほうが優先度を高くなってしまうんですよね。そうしているうちにフレームワークのバージョンが上がってしまい、また調査をやりなおしたりと正直苦労しました。一気に書いて出せればよかったとは思いますが、書くのに時間がかかったぶんきっちりした内容で出すことができて、結果的には満足しています。

7月5日に「開発者のためのChromeガイドブック (Google Expert Series) 」を出版しました。たぶん世界初だと思いますが、Chromeのパッケージアプリ、Chromeウェブストア、デベロッパーツールが三部構成で書かれています。デベロッパーツールについては、Web開発に関わっているすべての人々に役立つと思いますのでお薦めです。

──ところで吉川さんはCSSハックなどにも詳しいですが、それはフリーランス以前の仕事で身に付けたんですか?

白石編集長

いえ、以前はSIerに勤めていたのでWeb中心の仕事ではなかったですね。Webに関する知識はコミュニティでの活動が役立ちました。SIer時代は派遣型の仕事をしていたので、資格をたくさん取っていました。役に立つと信じて取り続けていたのですが、資格をたくさん持っているということは、逆に何が専門かがわかりにくくなるということなんだと気づいたのです。そこで、今後のキャリアを考えて何か1本強い柱をもったほうがいいと考えていたところに、「html5j」のコミュニティに出会ったんです。必死で勉強しましたね。私が得た知識はほとんどコミュニティで得たものなんです。そこでしっかり勉強し、情報発信も行なっていたら、1年くらいでエキスパートになっていました。

コミュニティ活動は最初から頑張るつもりだったわけじゃないのですが、勉強会などに参加しているうちスタッフの人たちに対して感謝と尊敬の念を抱くようになり、自分もコミュニティに対して貢献していきたいと思うようになりました。自分で調べたことを発表して、メーリングリストで質問に答えたり、自ら行った情報発信に対してフィードバックをもらったりすることで、ここまで成長できたのだと思っています。

モバイルのWebアプリの動向はどうなる?

──吉川さんの得意分野は広いんですが、特にモバイルのWebアプリの動向について意見を聞きたいですね。モバイルのUIをHTML5でつくるかどうかなど。

最近は「Web VS ネイティブ」がよく取沙汰されていますね。それにハイブリットアプリといったWebViewを使った混在タイプ。

──最近、そういう話題においてはjQuery Mobileを使うという話はあまり出てきませんね。

WebViewでjQuery Mobileを使う人もいますが、重くなっちゃうのでチューニングが大変という話はよく聞きますね。

──jQuery Mobileはどれくらい使われているんでしょう?

1年くらい前に、Eclipseのイベントで「モバイルフレームワークは何を使っていますか?」という質問があったのですが、jQuery Mobileは28%くらいでしたね。まったくなしという人が一番多かったですが、フレームワークを使うとしたらjQuery Mobileが最も一般的ではないでしょうか。あとはTitanium Mobileが3%くらいかな。細かい数値は、今ではもう変わっているでしょうが、モバイル向けのフレームワークとして最も使われているというのは間違いないと思います。

jQuery Mobileは多くの人が利用しているから、様々な優れた知恵が結集されています。問題に対する具体的な解決策がコードとして示されている。もしjQuery Mobileを使わなかったとしても、そうしたノウハウが集約されているという点だけでも、興味深いプロダクトであるのは間違いありません。

──最近では、Chromeデベロッパーツールのお話をされることも増えているようですね。

確かに最近、Chromeのデベロッパーツールの話をすることが多くなっています。アップデートが早くてどんどん機能が増えている。情報を追いかけるのが大変ですが、知りたがっている人も多いので情報発信していきたいですね。

Google I/O 2013でも、Webアプリのパフォーマンス向上に関するセッションが多く、デベロッパーツールに触れないセッションはなかったといってもいいほど。それくらい密接に関わってきています。デバッグツールを使って何かするというのは、もうWeb開発には必須となっていきます。最近では、コードを書くデザイナーも増えてきたので、デザイナーにとっても必要になってくる知識だと思います。この辺の情報は今後、「HTML5 Experts.jp」でも詳しくお伝えしていくつもりです。

日本にもっとエキスパートを。そのためにやりたいこと

──最後に、今後の活動や「HTML5 Experts.jp」に対する抱負をぜひ!

最近、「html5j」でビギナー向け勉強会などの活動を始めました。業界発展だ、技術革新だとか、一部のエキスパートだけが頑張っていても続かない。もっと多くの人にアプローチして、スキルを底上げしていけば、新しいエキスパートが増えて、どんどん日本が成長していくし、良くなっていくでしょう。そのために私はもっと初心者に向けて活動の幅を広げていく必要があると思っています。もちろん他のHTML5 Expertの皆さんの活躍も大変楽しみにしています!

[エキスパート No.3 吉川 徹] フリーランスのWebエンジニアとして活動中。html5jのスタッフとして、HTML5の最新動向を追うとともにHTML5の普及促進に務める。また、Google Developer Expert(Chrome)として、Chrome関連の情報発信も行なっている。その他、Webに関する講演や記事執筆、jQuery Mobile担当講師(allWebクリエイター塾)など。 http://d.hatena.ne.jp/pikotea/