9月29日に開催された、SkyWay初の開発者向けミートアップ「SkyWay Developer Meetup#1」。
2013年12月からトライアルサービスとして提供されてきたWebRTC Platform SkyWayのビジョンとミッション、基本的な使い方からハックな使い方などが紹介された同イベントの模様を紹介する。
SkyWayのビジョン&ミッション
2013年12月から、無償のトライアルサービスとして提供されてきたWebRTC Platform SkyWay(以下、SkyWay)。
一部では「WebRTCでサービス開発を行うならSkyWayが必須」と認識されつつある昨今、ついに2017年9月7日、商用サービスとして新たなスタートを切った。
本記事では、SkyWay初の開発者向けミートアップ「SkyWay Developer Meetup#1」の模様をお伝えする。
まず最初に登壇したのは、SkyWayプロダクトマネージャーの水嶋彬貴氏。
6,000人以上の開発者、10,000近くのサービス、300近くの企業に既に利用されているSkyWayは、現在なんと1日あたり50万近くのWebRTC接続を捌いているという。
こうした実績は、「WebRTCを使うとこんなにもたくさんのことができる、と開発者の皆さんに証明していただいた」ことの現れであると水嶋氏は強調。
その上で、新たなスタートを切ったSkyWayのビジョンとミッションを以下のように定義した。
「リアルタイムコミュニケーションを身近な技術に変え、世界中のソフトウェアエンジニアと共に世の中に革新を起こす」
リアルタイムコミュニケーションを身近な技術に変える
ミッションの前半「身近な技術に変える」という部分においてはまず、SkyWayの様々なAPIやSDK、日本語を含めたドキュメントが、WebRTCの難しさを中和してエンジニアの負担を減らすことができるとする。
それによりエンジニアは「WebRTCをどう使うか」ではなく、WebRTCを使ったイノベーションやアイデアに集中することができるようになる。
もうひとつ、身近な技術に変えるというミッションに基づいて提供されているのが、無償の「コミュニティエディション」だ。
無償で利用できる月に500ギガバイトという帯域量は、ボイスチャットであれば5,787日分、ビデオチャットであっても462日分に相当する。
これだけの無料枠を手軽に試せるならば、スタートアップや新規事業に採用するのにためらう必要はない。まさに「リアルタイムコミュニケーションを身近にする」を体現した形だといえる。
──そしてイノベーションを世界に広げる
しかし、と水嶋氏は言う。SkyWayがいくらWebRTCを身近にしたところで、それだけでは世界中に広がるものではない。
ミッションステートメントの後半部分「世界中のソフトウェアエンジニアと共に世の中に革新を起こす」を達成するには、SkyWayを利用する開発者の助けが必要なのだと。
そこで水嶋氏は「(開発者への)お願い」と題して、以下の4つを挙げていた。
- 横のつながり
- イノベーションのアイデア共有
- ノウハウの共有や相互支援
- 事業の成功と後続の支援
水嶋氏のプレゼン資料はこちらから参照できる。
WebRTC開発者にはたまらない!基本からハック、生Q/A大会まで!
その後は開発者向けにたっぷりと時間が割かれ、SkyWay / WebRTCに関する熱い議論が繰り広げられた。
SkyWayテックリードの岩瀬 義昌氏による「SkyWayを使いこなすために」というセッションは、SkyWayに関する基本から応用、ハックから内部関係者しか知らない情報まで盛りだくさんの内容だった。
あまりの情報量に、とてもではないがここでは内容を紹介しきれないため、詳しくは岩瀬氏のスライドをご覧いただきたい。
以下に、筆者として気になったポイントをいくつか書き記しておく。
*SkyWayは、現在開発が停止したPeerJSをベースに開発されていたが、内部はフルスクラッチで書き直しており、継続的なメンテナンスや機能追加を行っている。「古いのではないか」という心配はあたらない
*SkyWayでは、通常のP2P接続に加えSFU(Selective Forwarding Unit)もサポートしており、しかも無償から利用できる。
SFUとは複数のメディアストリームをサーバ側で一本にまとめてクライアントに配信する仕組みであり、多人数のビデオチャットを行う場合などに、P2Pのフルメッシュ型に比べてネットワーク全体の負荷を大きく低減することができる。
SkyWayが提供するRoom APIでは、フルメッシュとSFUを簡単に切り替えることができる。(SFUについてはSkyWayのドキュメントにある説明がわかりやすい)
*APIドキュメントに書かれていない機能もいくつかあり、統計情報の取得なども行える。気になる方は岩瀬さんのスライドを参照のこと。
*安定性やスケーラビリティについては万全の体制を敷いている。 (後のQ/Aセッションによると、開発チームの人員が5人以上の体制で監視しているほか、運営企業であるNTTコミュニケーションズの監視部隊とも連携しており、24時間365日稼働を保証しているとのこと)
SkyWay開発者によるライトニングトーク大会
以降も、ミートアップはまだまだ続く。
ライトニングトーク大会では4人の登壇者がSkyWay開発に関する実際から「やってみた」まで幅広いトピックでプレゼンテーションを行った。
@jumboOrNot氏による「iOSでのSkyWay開発の勘所とTips」
レアジョブ英会話というサービスで、SkyWayを利用したiOSアプリを開発した際の生々しい話。
Skypeで行っていたサービスをWebRTC化することで開けた展望、そしてiOSアプリ開発で直面した問題に対してGoogle Firebaseを用いて対処したことを紹介していた。
▼講演資料はこちら
@massie_g氏による「SkyWayのビデオチャットを録画しよう。そう、ブラウザでね」
現在のWebブラウザが備えるAPIのみを用いて、ビデオチャットの録画を行う方法を紹介。
▼講演資料はこちら
@leader22氏による「SkyWay JS SDKの歩き方」
SkyWayのJavaScript SDK開発をサポートしたPixelGridの杉浦氏による、JavaScript SDKの読み解きガイド。
講演資料: SkyWay JS SDKの歩き方
@lz650sss氏による「SkyWay×Cognitive Service」
SkyWayで受信したビデオチャットの画像をMicrosoft AzureのCognitive Serviceに送信し、表情を読み取るデモ
講演資料: SkyWay × Cognitive Service
フランクなQ/Aセッション、そして開発者だらけの懇親会。これぞデベロッパーファーストなミートアップだ
アジェンダの最後はQ/Aセッション。事前アンケートで集めた質問に対して、開発チームが自らフランクに答えるセッションで、非常に和気あいあいとした雰囲気の中盛り上がった。
そして(無料の)懇親会。会場の至る所で、Web(RTC)開発者同士のハイコンテクストな会話が繰り広げられていた。
最後に、イベントを通じて筆者が感じたことを述べておく。
SkyWayはもちろんプラットフォームであるが、このイベントを通じてSkyWayチームが実現したかったことは、「開発者コミュニティ」というプラットフォームづくりなのだろうと思う。
SkyWayというプラットフォームを提供してリアルタイムコミュニケーション開発の敷居を下げるだけが彼らの役割ではない。
同時に、開発者基盤としてのコミュニティ構築も図ることで、WebRTCを活用したイノベーションが生まれやすくすることも、また彼らの役割なのだと。
SkyWay開発チームのこうした挑戦が実を結び、日本発のプラットフォームが世界を席巻する日を、筆者は見たい。
※本記事はITエンジニアのためのキャリア応援サイト「CodeIQ MAGAZINE」(※2017年11月18日掲載)からの提供記事です。