聞き手: 白石☆自演乙☆俊平
2013年7月10日、Web技術者向け情報メディアがまた一つ誕生した。その名も「HTML5 Experts.jp」。このメディアは一体何を目指しているのか?「エキスパートコミュニティ」とは何か?html5jやNTTコミュニケーションズとの関係は?初代編集長である白石俊平氏に、こうした様々な疑問をぶつけてみた。
「HTML5 Experts.jp」とはなんなのか
どうもこんにちは。今日は、HTML5 Experts.jpというメディアについて、なんでも語っていただけるとのことで、期待しています。どうぞよろしくお願いします。
はい、よろしくお願いします。
まずは、「HTML5 Experts.jpとは何か?」について、簡潔に説明をお願いします。
HTML5 Experts.jpはWeb技術者向けの情報メディアです。
この名前には2つの意味を込めています。それは、「エキスパートによる質の高い情報を届ける」という意味と、「日本に、一人でも多くのエキスパートを増やす」という意味です。メディアの存在価値としては、後者の意味合いの方が重要なので、キャッチコピーは「日本に、もっとエキスパートを。」としました。
Web技術者向けのメディアって他にもたくさんあると思いますが、他と何か違うところがあるんでしょうか?
現時点では、形式的には、「よくある」メディアとそんなに変わらないものになると思います。ニュースやハウツー、レポート記事などを中心とした記事が集約されたものになるでしょう。あくまで「現時点では」ですが。
ただ、本質的には異なる点が3つあると考えています。
1つ目は、このメディアの執筆陣で「エキスパートコミュニティ」を形成していること。 メンバー一覧を見ていただくとわかりますが、実にそうそうたる顔ぶれです。エキスパートコミュニティと編集部は密接に対話しながら、時には執筆や記事のレビューを、時には運営の助言をいただきつつ、メディアとして大きく成長させたいと考えています。
2つ目は、限りなく非営利に近いこと。 これは、このメディアの運営母体であるNTTコミュニケーションズ社の意向ですが、広告収入などを目的としたメディアではありません。したがって、前述のミッション(「日本に、もっとエキスパートを。」)を、スポンサーに気兼ねすることなく追求することができます。
3つ目は、限りなく中立に近いこと。 先程申し上げたように、運営母体はNTTコミュニケーションズ社ではありますが、同社を含め、どこかに偏った情報発信を行うつもりはありません。 こうした中立性によって得られるものは、「自由」です。よりよいコンテンツを読者に届けるため、他の媒体にリンクを張ったり引用したりすることもできます。それは、相手が個人のブログであっても同様です。
また、「非営利で中立」という特徴により、html5jのような開発者コミュニティともうまく活動を共にしていけるのも、大きな強みです。
html5j・・・白石が管理人を務める、Web開発者向けコミュニティ。主な活動はメーリングリストで、2013年6月時点で会員数は5,700名を超える。「つながる、学べる、盛り上がる」を活動指針として、勉強会、部活動、カンファレンスなど、Web技術者を応援するための活動を活発に行なっている。「世界一Web技術者コミュニティが活発な国、日本」というビジョンを掲げ、日本中のWeb技術者コミュニティのハブにならんと、日本各地を回るという活動も開始している。
html5jの話が出たので、ちょっとお聞きしたいのですが、このメディアとhtml5jはどう異なるのでしょうか?HTML5 Experts.jpでも「(エキスパート)コミュニティ」という言葉を使用していて、少々紛らわしく感じました。
ひと言で言うと、html5jはコミュニティ、HTML5 Experts.jpはメディアです。
どちらも不特定多数の方々に対して情報を届けたり、イベントを行ったりという点では似通ったところはありますが、そもそもの目的が異なるというのが大きな違いだと思います。例えば「新聞」や「テレビ」がコミュニティと呼ばれることがないのと同様に、ぼくの中では位置づけが異なっていますし、それぞれが補完関係にあるものだと考えています。
あと、HTML5 Experts.jpにおける「エキスパートコミュニティ」は、html5jとは目的も対象も全く異なります。
html5jは、HTML5に関心のある人であれば誰でも入ることができる、完全に開かれたコミュニティです。
エキスパートコミュニティは、HTML5 Experts.jpというメディアにおける「執筆陣」であり、記事の「レビュアー」であり、「その他のなにか」でもあります。いわば、「HTML5 Experts.jpを創る」という目的を持った「ユニット」であり、誰でも参加できるという訳ではありません。
エキスパートコミュニティについて
エキスパートコミュニティに参加する要件などがあれば、教えて下さい。
現時点では、それほど明確な基準を定めているわけではありませんが、目安としては3つあります。
- HTML5 Experts.jpの理念に共感していただけていること。
- HTML5/Web標準に関する、確かな技術力を持っていること
- 確かな技術力を持っているということが、広く知られていること。
上記のような条件を満たすような、エキスパートにふさわしい方が、まだまだ世の中にいらっしゃるであろうことは、私たちも承知しています。自薦・他薦に依らずそうした方々が、エキスパートコミュニティに加わりたいと声を上げてくださることは、私たちとしても強く望んでいることです。
なぜ、メディアを作るのにエキスパートコミュニティを立ち上げようと思ったのですか?
3つ理由があります。
1つ目の理由は、メディアの品質を確かなものにしたかったからです。 このメディアは、執筆者もエキスパートなら、一般公開前に記事をレビューするのもエキスパートです。このことはおそらく、記事の品質を高めるのに大きく役立つのではないかと考えています。
2つ目の理由は、エキスパート同士のコラボレーションに期待していることです。 Webの世界は広くて深く、専門分野も分化しつつあります。しかし、それらの専門分野は共通の技術で繋がっており、実際には全てが関連し合っています。 例えば、Webアプリケーション開発の専門家と、SEOの専門家がクロスすることで、「SEOに強いWebアプリケーションを作るには」というような興味深いコンテンツを生み出せるかもしれません。
3つ目の理由は、単純に、「エキスパート同士が集うコミュニティ」を作ったらどうなるかを見てみたかった、というものです。 ぼくはコミュニティ作りが趣味のようなものでして、html5jだけではなく、様々なコミュニティを生み出してきました。そして、うまく回っているコミュニティの中ではメンバー同士が協力し合い、刺激しあって、素晴らしい成果が生み出されるという経験を何度もしてきました。 そのメンバーというのが、全員Webのエキスパートだったらどうなるか。そんなことを考えた時に、そんなコミュニティを見てみたくてしょうがなくなったのです。今後エキスパートコミュニティをきっかけとして、思ってもみなかったようなスゴイことが起きるんじゃないかと、とてもワクワクしています。
HTML5 Experts.jpが発信していく情報とは
エキスパートコミュニティの顔ぶれを見ると、様々な守備範囲を持つ方々がいらっしゃいますね。このメディアは、どういった分野の情報を発信していくのでしょうか?
HTML5 Experts.jpは、「技術分野をどこにするか」という考え方ではなく、「Web技術者にはどのような情報が必要か」という観点から、取り扱う情報の範囲を定めたいと考えています。 なので、「HTML5」から連想されるような次世代Web技術だけではなく、SEOやセキュリティ、アクセシビリティなども取り上げていくつもりです。現時点ではカバーできていませんが、もしかするとWeb担当者が必要とするようなアクセス解析、マーケティングなどの分野も発信していくかもしれません。
ちなみに、本当だったら、このWebメディアの名称は「WebExperts.jp」とするつもりでした。ドメインも取得済みだったりします。 でも実際は、類似名のメディアがあったり、雑誌があったりで、困った挙句にこの名称になりました(笑)
「すべての記事が永久保存版」となることを目指します!
最後に、 今後目指していることや、その先にあるビジョンなどがあれば語ってください。
今回、予想以上に多くのエキスパートにご賛同いただけたということもあって、当初よりも大きなビジョンを抱くことができるようになりました。 ご賛同くださったエキスパートの皆様には、心より感謝を申し上げたいと思います。
そんなHTML5 Experts.jpの編集方針は、「すべての記事が永久保存版」となることを目指すというものです。
例えば、「電子書籍にしてもおかしくないような質の高い記事を無料で読める」、そんなサイトになれば最高ですね。人もお金も限られた状態でそれを目指すのは大変ですが、頑張っていきたいと思っています。
また、「限りなく非営利・中立に近い」という性質のおかげで、他のメディアやリソースを「競合」と見なさなくて済むのも、このメディアの非常に素晴らしい点だと思います。既にたくさんの情報が世の中に存在する中、他のサイトとうまく補完関係を築きつつ、Web技術者にとって本当に有用な情報提供のかたちを実現したいと考えています。
夢は大きく、「すべてのWeb技術者が参照すべきメディア」を目指します!
本日は、インタビューにお答えいただき、ありがとうございました。
こちらこそ、どうもありがとうございました。
ちなみにこの記事は、インタビュー形式にしたほうが読みやすかろうとの配慮から、白石俊平が自作自演で行ったインタビューです。ほかに聞きたいことがあったら、この記事のコメント欄か、 @html5expまでお問い合わせください。