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及川卓也さん、河合良哉さんに聞いた「地方で日本で働く・海外で働くの話」(その1)──HTML5 Conference 2016☆番外編

HTML5 Conference 2016の展示ブースでは、私DJ KATOによる特別ラジオをお届けしておりました。
すごく面白いので、Increments及川卓也さんとヤマハ河合良哉さんがゲストに来てくれた「地方で日本で働く・海外で働くの話」を完全版テキストで書き起こしてみました。ぜひ、カンファレンスレポートの番外編としてお楽しみください!

まずは、自己紹介をお願いします


「海外にも地方にも行っていないのに、なぜか呼ばれています。Increments株式会社の及川卓也です」


「ヤマハ株式会社の河合良哉です。よろしくお願いします」


「地方にも海外にも行っていないというお話がありましたが、環境が大きく変わったという面で共通点があると考え、広い意味での定義としてとらえてほしいです」


「はい」


「まず、及川さんは…」


「ちょっと待って。お前は誰だという感じだから(笑)」


「あ!僕ですね!私、会津若松にあるIT系の会社に勤めております、加藤と申します。DJ KATOと名乗って、こういった司会をやらせていただいてます。どうぞよろしくお願いします」


「イエーイ!」

及川卓也さんの基調講演のお話


「先ほど基調講演を終えられたばかりですよね?(基調講演の後で)時間ありました?」


「1つセッションを聞いてきましたよ、React.jsの難しいやつを。途中で抜けてきちゃったんだけど」


「結構技術的な話を聞いてきたんですね。及川さんはどのようなお話をされたんですか?僕は聞きに行けなかったので…」


「聞いてなかったんだ!(笑)」


「準備をしていたので…」


「そうですか、ご苦労様です。僕は何の話をしたんだっけ?Webの話をしたんですよ。一応Webのカンファレンスなので。なんか飲んでもいないのに酔っ払ってるみたいですみません(笑)」

「Webは3つの側面がありますねという話で、アプリケーションの技術としてのWebとメディアとしてのWeb。あとはインフラ技術としてのWebで、それぞれいろんな局面を迎えている。でも今後も投資して、さらに発展させていかなきゃいけないですね、というすごくいい感じの話をした気がします」


「なるほど。そういった広い視点でのお話をされたという感じですね」


?????????????


「ごめんなさい!緊張してしまって、わけのわからないことを言って申し訳ないです」

「基調講演を聞いていないのに申し訳ないのですが、プラットホームとしてのWebって、例えばどういう変化が起きてて、これからどうなるということなんでしょうか?」


「ずっと起きている話で、要は機能的にもどんどん追加されてきていると。で、ある程度WebのAPIってそこそこ揃ったようには見えるんだけれども、実はWebって古くからコンピューターディスプレイがあって、キーボードがあって、マウスがあるというところから、やっと今スマホみたいなところになってきている。そういった今までのデバイスやメディア系のものを超えたものに、これからはなっていくでしょうという話をしました」


「はい」


「ちょうど私の前にW3Cで慶応大の中村修先生が、HDRの話をされていました。要は輝度の部分をJavaScriptでWebからコントロールできたならば、映像が大きく変わるだろうって話を少しされてたんです」

「それにインスパイアされて、音の部分もaudioタグがあって、Web MIDIがあって、Web Audioもある。そんな状況ですが、実は2009年という早い段階からGoogleは考えていたんです。空間音響みたいなところで、要はVRのサウンド版。どこの位置にいたならばどういうふうに音が聞こえるはずだということを、拡張機能として公開しているのがもうあったりするんですね」


「はい」


「今までの普通にコンピューターディスプレイやスピーカー、ヘッドホンだけでは想像もつかなかったようなところまで、実はそのアプリケーションとしての可能性もまだまだ可能性がありますねって話」

「あとはWebAssemblyの話で、もはやそうなってくるとJavaScriptとHTMLとCSSとは全く違うアプリケーション開発技術も出てくるから、楽しいと同時にいろいろと考えなきゃいけないねっていう話をした感じです」

「大丈夫ですか?これで今回のテーマにだんだん近づいてきます?」


「まだ1mmも近づいていないんですが、話の流れを大事に進めていこうと思います」


「了解です、任せます。ちょっと不安になりました(笑)」

河合さんに聞いたWeb MIDIのお話


「河合さんはWebとMIDIに関してお仕事上関わりがあると思うのですが、その方面で、今までできなかったことが今後できるようになるものにはどのようなものがありますか?」


「この隣にWeb Music Developers JP(※)というコミュニティーが主催している展示会場があって、そこで缶が鳴っていますけど、実はMIDIで動いていたりするんですよ。今まさに及川さんがおっしゃった、プラットホームとしてのWebのところでMIDIも入ってくるのかなと。外部のExtarnalのデバイスとブラウザが直接つながると、そこで起こったことは僕が言うのもすごく手前味噌なんですけど、楽器業界がWebの業界にどんどん入ってきたと言えるんじゃないかと思います」


「楽器が…Webに?」


「これも手前味噌なんですけど、ヤマハがrefaceというシンセサイザーを去年出したんですね。そのシンセサイザーは、普通のシンセサイザーだと大体ボイス、音色のパラメーターを保存するのに楽器に載っているメモリに保存するんです。だけど、そのrefaceというモデルに関しては保存する部分がなくて、どうするかというとWeb MIDIで接続をして、ブラウザから直接Cloudの方に保存する。そういうことで少し形が変わったかな。Webをストレージとして使うというような考え方に移ったと」


「なるほど」


「もう少し話すと、プラットホームとしてのWebという意味で、僕も昔から思っていて、やっぱりブラウザというとディスプレイがあってキーボードが目の前にあって、そこから外にあまり出ないよみたいなイメージがあると思うんですけど、それがまずMIDIで楽器の業界で外に出ましたと」


「はい」


「今ですね、GoogleのChromeにしか搭載されていないのかもしれないですけど、WebBluetoothっていうのがあって。このWebBluetoothというのを使うと、今度Bluetooth SMARTって呼ばれる世の中でいうBLEというやつですね。BLEの機器に直接接続ができるんですよ」


「はい」


「あそこにM&M’sが入ったおもちゃみたいなのがあるじゃないですか。あれ実はBluetoothで接続をして、ボタンを押すと中に入っているM&M’sがババババーッと出てくるおもちゃなんですけど、ああいうものが作れるようになるわけです」


「なるほど。これたぶんラジオで聞いている人にはちょっと…」


「見えないですね(笑)」


「見えづらいかなと思うんですけど、このすぐ隣にWeb Music Developers JPさんのブースがありまして、そこにWeb MIDIといろいろなものがあって、PCとMIDI楽器なんでしょうか?あれは?」


「そうですね。真ん中に並んでいるのはMIDIを使ったコントローラーで、その次に並んでいるのがライブビーツっていうブラウザを楽器にしてしまうような作品です。で、その隣にあるのがシーケンサー、これFirebaseを使って、いろいろな人と進行しながら音楽を作っていくハッカソンでハックしてもらった作品が展示されています。その隣には、これもWebの技術を使って照明をコントロールしようというもので、照明がコントロールされています」


「照明を、MIDIで?」


「はいそうですね」


「あ、そうなんですね」


「MIDIってミュージカルインストゥルメンタルデジタルインターフェイスという名前なんですけど、そのプロトコルを別の用途で使ってしまっているということですね」


「つまりMIDIって、タイミングだったり音色だったりという概念があって、それを表示のタイミングだったり、どの色にするかに置き換えて命令を出すという感じなんでしょうか」


「そうですね。おっしゃるとおりでございます」


「なるほど」


「その隣に並んでいるのがMIDIに関係ないですけど、WebBluetoothで接続されているお菓子が出てくるおもちゃです」


「さっき河合さんがブースを作っている準備段階をお見かけしたんですけど、M&M’sが勝手に動いてチョコレートをバラバラと吐き出しているのを見ましたけど、あれもMIDIでやっていた?」


「いや、あれはMIDIとは関係なくて、Bluetoothで接続をしてBluetoothで動かしています。もう一回出してみます。……あんな感じで」

※筆者注:↑Bluetoothで動かしているとさっき河合さんが言ってました。話を聞いていない。


「今出てる!」


「ここから接続しているんですけどね、全然見えないですよね(笑)」


「今まではMIDIというと、鍵盤があってそれをUSBでPCに繋ぐと、そのPCのソフトで楽器が鳴る。それは専用のソフトがあってそのソフトが鳴るイメージだったものが、今はWebブラウザがあればそのWebブラウザの表示の機能でMIDIのUSBに繋ぐだけで全部音が鳴ったりだとか、専用ソフトになるようなことが全部出来てしまうという状態になっているということですね」


「そうですね。それを楽器以外のもので使うことのも可能なので、そういったとこに応用していくっていうのもありかな」


「なるほど」

<参考情報>

河合さんがサンフランシスコに拠点を移されたお話


「ちなみに今年サンフランシスコの方に拠点を移されたということで、それはどういった目的で移動されたのですか?」


「夢にも思ってもなかったのですが、ありがたいことに駐在の司令を出してもらえ、今年1月下旬からアメリカに住んでます」


「日本でのWebのMIDIの普及と、海外でのWebのMIDIの普及には違いがあるんでしょうか?ご自身で決めていったというわけではないという話だったので、そういう依頼があったわけではないと思いますけど、海外に行ったことで日本のWebMIDIの盛り上がりと、海外の盛り上がりの違いがあったらお聞きしたいです」


「基本的に僕がまだ全然知らないだけかもしれないですけど、日本で今展示しているのがWeb Music Developers JPなんですけど、ここが異常に盛り上がっている感があるというのが僕の印象です(笑)」

「海外にWebでミュージックをする方たちがいるかなというと、あまりいないかなという気がしています。とはいえ、音楽で盛り上がっているというコミュニティはあるみたいで、その方々はいろいろなことをやっているみたいです。例えばWebGLを使って音楽と組み合わせて作品を作ったり、そういうのをアメリカでよく見かけることがありますね」

及川さんが海外で仕事をしていた話


「及川さんは海外で勤務された経験もおありなんですよね、いつ頃でしたでしょう?以前働いてらっしゃったのは日本DEC(※)にいらした後、Microsoftで働いていた時に海外にいらしたと…」


「そうです、よく知っていますね!」


「ネットで調べたら出てきました」


「その前に加藤さん声ちっちゃくない?」


「すみません、気持ちの萎縮が声に出ていたのでちょっと張ります」


「あと、マイクは柄の部分を掴んだ方がいい気がするよ(笑)」


「はい、こんな感じでよろしいでしょうか?(笑)」


「はい、ぜひ元気よくいきましょう!」

「私今から20年ちょっと前にまだMicrosoftが小さかった時ですね。Windowsのエンタープライズ版のWindowsNTっていう今のWindowsなんですけど、それの元のバージョンを作った時に1年くらい派遣されました。シアトルというか、郊外のレドモンドにある今Microsoftの本社があるところに行きました」


「その時に、日本から海外に行かれたということで、暮らす環境だったり仕事のやり方だったり、すごく違いを感じたのではないかと想像するのですが、その辺りはどうでしたか?」


「そうですね、だいぶ違いましたね。しかも当時ってインターネットまだないんですよ。あるんですけど、Webはまだ作られていない時だったんですね。ちょうど私がレドモンドにいた時に、Webっていうものがあるらしいぞというので、NASAの宇宙の写真とかを最初に見たのを覚えているくらいなんですよね。なかったんですよ」

「つまりどういうことかというと、行く前に現地の情報とかそんなに分かんなくて、ニフティサーブという今のニフティの原型があり、そこがアメリカのコンピュサーブっていうパソコン通信にゲートウェイで接続きたので、そっちの方のフォーラムに入ったりしていろんな情報を入手したりしていたんですね。また逆に、アメリカ勤務していても、日本の情報がほとんど入ってこないんですよ」


「そうなんですね。


「なので、どっちがいいかというと正直分からなくて、昔は昔でそういった現地に行かないと分からないものを、現地に行って分かる面白さとか醍醐味があったんですけれども、不便といえば不便でした」

<参考情報>

インターネットで知ることと、現地に行って知ることの話


「なるほど、それは良し悪しあるんですね。今は狙った検索ワードを入れれば、大抵のものはヒットして分かるという状態になっているじゃないですか。それは日本にいても海外にいても見れるので、ネットで繋がっていれば一緒に仕事もできるし、知らなかった情報もすぐネットでキャッチアップできるような環境に今は変わってきている気がする。なので、海外に行って困るというのは前と比べると少なくて済む状況になってきているのではないかと思うのですが」


「そうですね。今僕も向こうにいるわけなんですけど、インターネットから大体情報が入ってきますし、すごく変わったかなと思うのが、テレビもすごく変わったと思うんですよ。家にソニーさんが作っているnasne(ナスネ)™というサーバーを、日本の自宅に置いているんですね。そうすると、海外からも日本のテレビ番組が普通に見れるんですよ」


「撮りためておいて、普通にそれが見れるという感じなんですか?」


「そうですね。撮りためもできるし、リアルタイムで見ることもできたりするので、アメリカにいるのに日本のテレビ番組を見てたりすることもあったりして、その辺は本当に情報がすごく入って来やすい。自分で取りに行こうと思えばいつでも行けるという状態になっているというのは間違いなくあるという気はするんですけど、1つ僕が結構思うのは、情報ってやっぱり情報なんですよ」


「はい」


「重要なのって情報の周りにある雰囲気だったり、文化的な背景だったり、そういうところが結構重要だということを僕は思っているんです。情報は入ってきやすくなってきたけど、ディテールのところは現地に行かないと分からないかなという気がしているんですけど、及川さんその辺いかがでしょうか?」


「そうなんですよね。英語圏でアメリカにいると、インターネットで得られる情報と、現地で得られる情報っていうのはもちろん差はあるけれど、そんなには多くないんですね」


「はい」


「ただ他の国に行った時に、我々が現地の言葉を知らなかったりすると、どうしても英語の情報に頼るじゃないですか。もしくは日本語の情報に頼ると。例えばヨーロッパに行った時に現地の人から教えてもらったのは、トリップアドバイザーの情報でいい店だって言われて行くわけですよ。それはアメリカ人のテイストにあってる店がレコメンドされるだけだよってはっきり言われたんですね」


「なるほど(笑)」


「だから、本当に現地の人が行くところで推奨している店が、そこに引っかかるとは限らないということを言われたから、やっぱりインターネットで得られる情報と現地の本当の情報は必ずしも一致していないことは覚えておいたほうがよくて。ただ、今ちょっとトリップアドバイザー、最近元Googleの僕の友人が日本法人の社長になったんですけど」


「そうなんですか(笑)」


「まあ、それはいいんですが(笑)」


「だけれども、逆に言うとそれはそれで便利なんですよ。なぜかというと、トリップアドバイザーでいいって言われているのは確実に英語が通じたりだとか、アメリカ人と日本人のテイストはだいたいあっているんで、そんなに間違いはない」

「ただ、やっぱり今言ったみたいに、本当に現地で価値があるって言われているものが英語で情報として流通しているかどうか分からないところはあったりするんで、やっぱりネットの情報で便利になったと思う反面、ネットだけでいろんなところに行こうとしたら、実は現地でしか味わえない醍醐味だとか、本当に大事なものを見失ってしまう可能性はあるかもしれないなって思いますね」


「そういう側面もありますね」


「例えば、逆にふっていいですか? 地方に東京から移住した加藤くんに聞きたいんですけれども」


「はい」


「要は、もう日本語で普通に会津若松の情報って分かるじゃないですか。でも現地に行ってみたら全然違ったっていうようなことって、実際に暮らし始めてみてからあるんですか?」


「いくつかやっぱりありますね。そもそもあんまり店がないのかなって思っていたら、みんながWebにあげていないだけで、実際に足を運んでみるとすごく美味しい店が近くにたくさんあったりとか、そういうギャップがあったり。あとは食べログとかを見てお店を選ぶんですけど、評価が普通なお店でも行ってみると店員さんがすごく優しくてフレンドリーで、何回か行ったら一品増やしてくれたりとか、これはちょっと分からないだろうなとは思いました。それは現地に行ってこそ分かるものだなって分かりました」

「今は逆に検索すればわかるから、ネットがつながってるから、情報共有も簡単にできるだろうと思い込むのは危険なところはありますよね。その辺は会社によってやり方は違うと思うんですけど。Microsoftなんかはレドモンドに社員を皆さん集結させて、なるべく物理的に近くにいてコミュニケーションロスを減らそうとしているとどこかで見たのですが、そういう会社もあれば、Googleは逆にどこにいても仕事はできるからというかたちで、物理的に散らばって要所要所で集まって意思疎通をしていると聞きました」

「そういうスタイルや、会社さんごとにいろいろなやり方でやっていると思うんですが、1つ言えるのは以前よりも単純な情報の共有はすごくやりやすくなったので、海外にいきなり行くとなった時も、以前のような準備がそこまでいらなくなってきているのかなと感じました」

<参考情報>

──後編は「日本と海外の違いの話」「年齢が違う人とのコミュニケーション」などの話を紹介します。

(撮影・写真提供:HTML5 Conference 2016撮影スタッフ)